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まだ人が降りているのに電車内へ突進…リュックを鎧にした“ぶつかりおじさん”に大迷惑「ドミノ倒しが起きてもおかしくなかった」

大声で電話する高齢女性

電車で移動する人々 山下武さん(仮名・60代)は、会社帰りにいつものように満員電車に乗っていた。 「私は定年間近の会社員ですが、スーツを着ているためか、誰も席を譲ってはくれません。そのときはつり革につかまっていました」  山下さんの目の前の座席には、大きなカバンを抱えた高齢の女性が座っていた。突然、カバンの中から、大きな着信音が鳴ったそうだ。 「まさかと思ったんですが、おばあさんは電話に出て大きな声で話しはじめたんです」  周囲の視線が一斉に彼女に集まり、車内は静まり返った。聞こえるのは“おばあさんの大きな声”だけだったという。 「私は徐々にムカついてきました。でも、誰も何も言いませんし、私も言えませんでした」  その会話はどうでもいいような内容ばかりだった。山下さんのムカつきが増幅する中、事態はさらに悪化する……。 「私のこと睨んでんのよ」と言いがかりをつけられ…  なんと、彼女は山下さんを指さして、電話の相手にこう言ったのだ。 「ねえ、聞いてよ! 目の前に立ってるおじいさん、私のこと睨んでんのよ」 「何も悪いことしてないのに。怖い、どっか行ってほしいのよね」  乗客の視線は山下さんに集まった。 「これじゃ、私が何かやったみたいだ!」と山下さんは思った。「冗談じゃない、あんたのこと見てるの私だけじゃないよ。みんな見てるよ!」と心の中でつぶやくことが精一杯だったという。  この場から一刻も早く離れたかったが、満員電車では身動きがとれなかったようだ。  周りの視線を感じながら、ただ耐えるしかなかったのだが、この“ムカつき”はこれで終わりではなかった。

目の前の席を奪われ“ムカつき”が頂点に

「おばあさんの電話がやっと終わって安堵したのも束の間、席を立つと私の顔を睨みながら『ふんっ』と鼻を鳴らして降りていったんです。私のムカつきが頂点に達しましたが、何も言えませんでした」  そして、気を取られている隙に、山下さんの前の空いた席を隣に立っていた若い女性が奪ったという。 「おいおい? そこに座るのは、目の前に立っていた俺だろう……と思いました」  女性の口元が、“してやったり”と言わんばかりに見えたと怒りをあらわにする山下さん。 「くそ! 何なんだよ、今日は」  先ほどとは違った“強いムカつき”が込み上げてきたそうだ。 「このやり場のない怒りは、ビールを飲まないとやってられないな」と山下さんは駅前の居酒屋でうっ憤を晴らすことになった。 <取材・文/chimi86>
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。
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