ライフ

「幼稚園の年中で九九を覚えさせられ…」厳しい教育を受けた27歳女性が「母親の人生のやり直し」を避けるためにしたこと

反旗を翻し、自身の夢を伝えるも…

 さまざまな事情から降りざるを得なかった学歴レース。その悔しさから、愛さんの母親は自分の娘を“敵討ち”の道具にしたのかもしれない。優秀で、母の期待通りの成績を修めた愛さんが“反乱”を起こしたのは、高校生のときのことだった。 「母に言われるまま中学受験をして、勉強をやり込んできた私でしたが、本当は絵を描くのが好きでした。学生時代、母の目を盗んで勉強の合間に絵を描いていたんです。高2くらいのとき、進路を真剣に考えるにあたって、『母親の人生のやり直しをさせられているだけだ。このままでは私のやりたいことはできなくなってしまう』と考えて、芸術系の大学へ行きたいという希望を打ち明けることにしました。  当然、母は大反対。『あんたにこれまでいくら注ぎ込んできたと思ってるの?』『公立大に入って仮面浪人していい大学へ行きなさい』と矢継ぎ早に浴びせてきました。私は、どうせ浪人するなら、芸術大学へ行きたいなと考えました」

志望校に入学してから気づいた“格差”

バカデカい愛さん 結局、浪人して芸大へ進学するための予備校へ通うことになった愛さん。母親は最後まで反対したが、思わぬ援軍を得た。 「父は母と仲が険悪で、口を開けば母の悪口を言っているような人です。母の教育への暴走を止められなかった罪滅ぼしなのでしょうか、父と父方の祖母が、予備校の学費の一部を出してくれました。大部分は、週に6回ほど朝6時から11時まで駅構内でのバイトをして補いました。浪人時代の私は、バイト先から予備校に直行して勉強する生活をしていたんです」  浪人の甲斐もあって晴れて京都市立芸術大学へ合格。だがその門をくぐった愛さんは、同級生たちと住む世界が違うことを思い知ったという。 「予想はしていましたが、芸大へ進学する子たちの実家は裕福なので、経済格差は常に感じました。そもそも制作にも費用がかかるので、実家からの支援があってアルバイトの必要さえない同級生たちとはスタートラインが違うんですね。私は体調を崩して留年を選択したため、入学の同期とは卒業年がずれるのですが、彼女たちが卒業を前に『アルバイト経験がないから、アドバイスがほしい』と来たときは仰天しました。就職に際して1度もアルバイトをしてこなかったのが不安だったようなのですが、私からすると、恵まれた環境すぎて(笑)。  私は学生時代、とにかく単価のいいアルバイトを探して、キャバクラ、コンセプトカフェ、ガールズバー、メンズエステなどで働いていました。あまりに境遇が違うので、アドバイスと言っても逆に迷ってしまいますよね」
次のページ
「恨んでいる状態がしんどい」境地に
1
2
3
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

記事一覧へ
おすすめ記事
【関連キーワードから記事を探す】