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「幼稚園の年中で九九を覚えさせられ…」厳しい教育を受けた27歳女性が「母親の人生のやり直し」を避けるためにしたこと

「恨んでいる状態がしんどい」境地に

バカデカい愛さん 両親の都合に翻弄された愛さんは、夢だったイラストの世界で頭角を見せている。意外なことに、現在は母親とも1~2ヶ月に1度はランチに行くのだという。それはなぜか。 「端的に言うと、恨んでいる状態がしんどいからですね。私は、自分の人生がうまくいかないのを親のせいにしている人間が一番嫌いなんです。自分がそうなりたくないので、歩み寄る意味で必ず定期的に会うようにしています。  母親は今になって当時のことを忘れたかのような発言をすることが多く、その点は呆れを通り越して尊敬すら覚えます。『確かに厳しく躾けたけど、手を上げたことはない』とか本気で言うんですよ(笑)。私の認識では、週に4〜5回ほど暴力はあって、むしろ殴られない日のほうが少なかったんですが、記憶が改ざんされているんです」

優しくなった両親に対して思うことは…

 打ち解けたというには程遠い状態にも思えるが、一方で負の感情を自らのなかに内面化しないよう務める愛さんの気持ちは首肯できる。そんな彼女は今、両親に対して何を思うのか。 「これは両親に共通しているのですが、今になって優しくしてくるんですが、率直に言って『なんで今更?』という思いが強いですね。自らの行動を反省しているようにも受け取れるんですが、そうであるならば、最初から子どもとの関係性に気をつけるべきだったのではないかと思ってしまいます」 =====  親子関係もまたひとつの人間関係である以上は、家庭内という密室空間だからこそ、互いに細心の注意を払うべきだろう。親が人生のリベンジに子どもを利用すれば、子どもは自ら人生を生きられなくなる。自らを支配していた母親の筋書きから解き放たれ、旺盛な創作欲で突き進む愛さんの未来が明るいものになるといい。 <取材・文/黒島暁生>
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
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