白馬村が自然エネルギーとEVの楽園に進化中
日本をつなげ!プロジェクト
~電気自動車で全国の「元気!」を突撃レポート~
第6回:長野県白馬村『あぜくら山荘』
月日の流れは早い。夏の終わりに日産リーフで訪ねた白馬村。のんびりしてたら年を越えてしまったので、あわてて記事を書いている。今回のテーマは『安上がりで「先進」の施設になる方法』だ。旅館やペンション経営に携わる人。あるいは、駐車場付きのお店などに関係している人は必見なのだ。
白馬村を訪ねたのは、日本EVクラブ(代表:舘内端)で開催した『EVで白馬へ行こう!』というイベントに参加するためだ。私はクラブ代表の舘内さんらとともに、日産リーフの広報車で白馬へ行った。なぜ白馬なのかというと、今回私たちが宿泊した『あぜくら山荘』と、近くにある『カナディアンヴィレッジ』という宿のオーナーさんが「白馬村で小水力発電を増やし、その電力を使って走るEVを導入したい」と、2012年のはじめごろ、日本EVクラブを訪ねてくださったのがきっかけだった。
『あぜくら山荘』オーナーの渡辺さんが「北アルプスの圧倒的な自然に魅せられて」この宿を始めたのは30年ほど前のこと。コンピューター関係の仕事をしていた31歳のころからほぼ手作りでこの建物を作り、白馬村に移住したという。「冬季五輪を開催した場所は、欧州では世界屈指のスノーリゾートとして評価されている。白馬村は世界に誇るべきリゾート地なんです」と渡辺さん。
電気自動車に興味をもったのは「エネルギーのことを考えながら、移動手段としての自動車を楽しむためにEVは不可欠。EVは大人の社会の道具」と感じたから。白馬村を、そして自らの宿を「大人の遊び場にしたい」という渡辺さん。客室数は7室と大きな宿ではないものの、暖炉のあるダイニングスペースなどは落ち着いたたたずまい。『あぜくら山荘』はまさに大人のリゾートと呼ぶのにふさわしい静かな宿だ。
白馬村を自然エネルギーとEVの楽園にしたい。渡辺さんたちの相談に、日本EVクラブの舘内代表が提案したのは、EV充電用の200Vコンセントを宿に備えることだった。『あぜくら山荘』と『カナディアンヴィレッジ』ではさっそくコンセントを設置。今回のイベント開催が実現したというわけだ。
充電施設の少なさがEV普及の足かせのようにいわれている。たしかに、白馬村の周辺は、近郊の大町市あたりから日本海に抜ける糸魚川あたりまで急速充電器の空白地帯。白馬で充電できないと、EVで白馬へ出かけるのは難しい。でも、こうして白馬の宿に200Vのコンセントさえあれば、市販EVで不安なく訪れることができる。
『あぜくら山荘』でコンセント設置にかかった費用は「ブレーカーの工事と一緒にやってもらったので、1万円とか2万円くらいじゃないかな」(渡辺さん)というようにわずかなもの。ところが、今の日本では、EVを充電できる宿泊施設はまだ皆無に等しいから、200Vコンセントを設置するだけで「EV時代に対応した先進の宿」を名乗るためのツールが手に入る。他の宿と差別化できて、宣伝手段としてはこの上なく安上がりなのだ。
宿泊施設だけじゃない。観光客が数時間を過ごす、あるいは過ごしてほしい施設なら、200VのEV用充電コンセントを用意するだけで、カーナビなどのEV用充電場所として表示されたり、EVオーナーが口コミで宣伝してくれたり、こうしてメディアが取り上げたりもする。EV普及を願うEVファンの一人として、急速充電器網の整備はもちろんだけど、観光施設の駐車場にはEV用のコンセントがあるのは当たり前、って時代が早く来て欲しいと思う。
ちなみに、渡辺さんたちの活動は白馬村で着々と進行中。2014年には日本EVクラブとともに、全国のEVに「白馬村へ集まろう!」と呼びかける『日本EVラリー』の開催計画が深く静かに進んでいる。国の施策に文句を言ってるばかりじゃ時代はなかなか変わらない。全国の潜在EVファンのみなさん。EVを楽しみながら「大人の時代」を一緒に作っていこうぜぃ!
●東京~白馬の電気自動車「充電記」は日本EVクラブ公式サイトでも公開中!
http://www.jevc.gr.jp/?p=4075
【あぜくら山荘】
長野県北安曇郡白馬村和田野
TEL:0261-72-5238
<文と写真/寄本好則(三軒茶屋ファクトリー)>
この特集の前回記事
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ