再生可能エネルギー「藻類バイオマス」を国策に――筑波大学・渡邉教授の思い【後編】

日本をつなげ!プロジェクト
~電気自動車で全国の「元気!」を突撃レポート~

第5回:つくば藻類バイオマス利用ワークショップ2012【後編】

 日本を産油国にしてくれるかも知れないオーランチオキトリウム。研究の第一人者である筑波大学の渡邉信教授に会うために、つくば市内で開催されたワークショップに、レンタカーの日産リーフに乗って参加してきた。

⇒【前編】はこちら

◆渡邉教授の「日本」への思いとは……

 プロジェクトは着々と進んでいる。とはいえ「国に対して苛立ちとかはないですか?」と、渡邉教授にぶしつけながら質問してみると。穏やかな笑顔を湛えたままに「いっぱいありますよ」という返事。

 オーランチオキトリウムをはじめとする藻類バイオマスの研究は日本国内でもいくつかのプロジェクトが進められている。でも、それぞれバラバラに研究しているのが現状だ。藻類バイオマスは近未来の日本の趨勢を左右する重大な課題だからこそ「国として戦略を練り、明確なロードマップを作成して対応すべき」というのが、渡邉教授の熱い思いだ。

 渡邉教授のもとには国境を越えた企業などからのオファーがある。でも「私はまだ日本を愛している」し、藻類バイオマスの技術は日本がリードしていくのが世界平和のためにも理想的という思いから、渡邉教授はあくまでも日本国内で日本資本による実用化を目指している。筑波大学が中心となり、藻類バイオマスの産業化を目指す『藻類産業創成コンソーシアム』(http://algae-consortium.jp/)を設立しているが、明確な国のロードマップが示されていないから参加企業も「まだまだ様子見でしかない」のが現状だ。

 実用化に向けて、渡邉教授のプランではオーランチオキトリウムを培養したあとの二次処理水でボトリオコッカスを培養する「併せ技」を計画している。ボトリオコッカスの研究はアメリカが巨費を投じて進めているが、日本には神戸大学で品種改良された有望なボトリオコッカス(「榎本藻」と名付けられている)がある。国が中心となって日本国内の藻類バイオマス技術をまとめ上げ、集中的に投資を進めれば、実用化への道筋がより明確になるはずだ。

藤田智美

大阪から日帰りで参加した藤田智美さん

 つくば市役所で開催されたワークショップには100名ほどの参加者が集まって盛り上がっていた。しかも、集まっているのは研究者や専門家ではなく、つくば市周辺や、なかには「大阪から日帰りでやってきました」という女性など、普通の市民がほとんどだ。学術的なテーマが主題のワークショップとしては、異例なほどの注目度の高さといっていいだろう。国が原発再稼働を巡ってじたばたしてる間にも、賢い日本国民は藻類バイオマスの可能性に希望を見つけ、自分にできることを探して行動を始めているということでもある。

 渡邉教授の計画によると、オーランチオキトリウムの実用化は、2015年までにつくば市内の2ヘクタールの土地で実証実験。2015年から2020年にかけて茨城県や宮城県内の約300ヘクタールに拡大。2020年以降、全国の耕作放棄地などを活用して年間2000万トンの石油(炭化水素)を生産することを目指しているという。

 2000万トンは現在の日本国内の原油消費量の約10%程度となる。これが決して夢物語ではない確かな技術が日本にはある。もし、国が国策として本気で取り組めば、さらに大規模な石油生産を実現できるはず。逆ギレ総選挙で禊ぎを受けた国会議員のみなさんも、ビジョンなき脱原発をおまじないのようにつぶやいたり、逆噴射的に原発ゴリ押し新設を目論む前に、藻類バイオマスを本気で考えてみて欲しい、とほんとに願う。

【コラム】電気自動車の電子書籍を出してみました

首都高八潮PA

筑波からの帰り道。首都高八潮PAで急速充電。

 今回の取材車はメーカーの広報車ではなく、レンタカーを借りてみた。12時間で約1万円。最安のコンパクトカーよりは少し割高だけど、ガソリン代がかからない分だけ値ごろ感はある。ちなみに、店舗の人に話を聞くと「リーフは何度も借りてくれるリピーターが多い」とのこと。何も知らずにEVを借りると充電場所などでトラブルになるだろうけど、EVの特徴を理解してしまえばエンジン車よりも気持ちいい。EVは癖になるのだ。

 さて、電気自動車に乗って取材を続けているこの企画。これまでの電気自動車活用体験を盛り込んで、アマゾンのKindle本を出版してみた。EPUBの設定のせいか段落がちょっと変になっていたりするけれど、100円ポッキリの個人出版本なのでそこはご愛敬ということで……。

『電気自動車で幸せになる』 私は電気自動車が大好きだけど、あまり興味のない人にその魅力を熱く語れば語るほどに「でもさ……」みたいな顔をされる。端的に言ってしまえば「電気自動車とエンジン車は別の乗り物」ということなんだけど、その真意を語れば長い話になってしまう。だから、できるだけ面白く読み進めつつ、電気自動車って何なのかを熱く語ってみた本だ。

 EVのことをまだあまり知らない人。あるいはすでにEVをどっぷりと愛している人に。ぜひご一読いただきたい。

●『電気自動車で幸せになる』⇒http://nikkan-spa.jp/351398

<文と写真/寄本好則(三軒茶屋ファクトリー)>

電気自動車で幸せになる

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