知的なEVオーナーが渇望する「バカボタン」とは?
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第7回:知的なEVオーナーが渇望する「バカボタン」とは?
EVは知的な乗り物だ。スムーズにドライブするためには、電池の残りと目的地までの距離を適確に判断しなきゃいけない。アクセルを踏み込むときには「自分がどのくらいのエネルギーを使って移動しようとしているのか」と考えさせてくれる。しかも、静かで乗り心地がいい。おまけに、同程度の車格のエンジン車と比べて電池が高価な分だけ値段も高い。現状のEVは、お金に余裕がある人しか買えない知的な高級車なのだ。
いち早くEVオーナー生活を楽しんでるのはどんな人なのか? 急速充電器が設置された関越自動車道の三芳PAで、リーフオーナーが集まるオフ会が開かれると聞いて訪ねてみた。
集まったリーフは7台。私も三軒茶屋の日産レンタカーでリーフを借りていったので、駐車場には全部で8台のリーフがズラリと並んだ。もちろん、アイドリング音なんてまったくしないEVの群れの中に身を置くと、傍らに停まったトラックのエンジン音がすごく野蛮に聞こえてくる。さっそく、リーフオーナーのみなさんに話を聞いた。
オーナーの声に感じたのは、みんな、リーフに乗ることをとても楽しんでいるということだ。EVドライブを楽しむために大事なのは「ルートを前もって調べること」(淳さん)や「回生ブレーキ(減速時に発電してバッテリーに蓄える)を上手に使うこと」(Muteさん)というように、EVの弱点とされる一充電航続距離の短さを逆手にとって楽しんでいる。
実際、リーフで走り回ってみると、航続距離はそれなりに心配だけど、最近は急速充電器の数も増えてきて、意外と問題なく使えるものだと気付く。「習うより慣れる。とにかく一度乗ってみて」(Satsukiさん)ということだ。
EVを褒めてばかりは不公平なので、不満な点も聞いてみた。みなさん「そんなに不満はないんだけどなぁ」と言いつつ、まず「窓が曇りやすいこと」(CoCoさん)や、「暖房を使うと電費が落ちる」(まにゃさん)など、大きな電力を消費する空調の使いにくさを挙げる人が多かった。個人的には「暑いときは窓を開け、冬はスキーウェアで乗ればいい」と思うけど、EVが大衆車となるためにはそんなわけにもいかないだろう。航続距離が改善されたマイナーチェンジ後のリーフでは、効率的な暖房がさらに工夫されている。
ともあれ、「まだ乗ってる人が少ないから優越感満点」(Muteさん)や、「もう、ガソリン車には戻れない」(広さん)や「ドライブがますます好きになった」(淳)というEVならではの快適さを満喫している言葉が、先走りリーフオーナーの気持ちを象徴している。
今後のEVに望むことで、面白かったのが「ぜひ、バカボタンを付けて欲しい」(puffさん)という主張。電気を節約するエコモードより、ここぞという時に圧倒的なパワーを発揮するおバカなボタンを装備して欲しい、ということだ。
実は、そんなバカボタン的な装備を搭載したコンセプトカーを、フランスのルノーが発表した。「トゥイジー ルノー・スポール F1」は、F1で使用されているKERS(運動エネルギー回生システム)をそのまま搭載し、ここぞという時には、高級スポーツカーなみの「0-100km/h 加速」タイムを叩き出すらしい。
⇒【写真】「トゥイジー ルノー・スポール F1」https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=456238
このコンセプトカー。F1用KERSのプロジェクト・リーダーを務めるローラン・ドゥバイヨル氏の「F1用のKERSをトゥイジーに積めないかな?」というほとんどジョークのような発言がきっかけで開発が実現したという。EVはエンジン車よりも構造がシンプルで、こういう「メカ」を工夫しやすいという強みがある。
考えてみれば「そこまでやるか?」と笑っちゃうような「おバカ」な発想や工夫こそ、クルマの楽しさ、面白さじゃないか。メカを工夫しやすいEVは、エンジン車よりもおバカさと相性がいい。「バカボタン」のアイデアは侮れない。
オフ会の発起人でもあるSatsukiさんは「いち早くオーナーになったことで、リーフの成長を見守っていけるのが楽しみ」と話してくれた。今はまだ日本で普通に買えるEVの車種は多くないけど、これからどんな「おバカ」EVが登場してきてくれるのか。ますます楽しみにして見守りたい!
<文と写真/寄本好則(三軒茶屋ファクトリー)>
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