罰金刑や懲役も! 素人密漁は「犯罪」だ
昨今、海や川での密漁行為が増加している。密漁といえば、暴力団の資金源のように、組織的な犯行がとりざたされることが多いが、実は、立ち入り禁止区域に入る不法な釣りや、禁漁とされている魚介類を獲るなど、個人の“素人”による犯行も横行しているのだ。逮捕されるかもしれないリスクを背負ってまで行為を繰り返す、素人密漁者が後を絶たないのはなぜか。
◆罰金刑や懲役になるケースも!遵守すべき海の掟
東京海洋大学の奥山文弥客員教授は、次のように分析する。
「日本では、海や川の生物捕獲に法律や規則があることを義務教育で教えていません。その結果、自然資源の所有権をあいまいに考える人がいる。カナダでは小学生ですら釣りのライセンス登録を行い、釣具店ではその地域の釣りに関する規則を明記した案内が用意されている。日本でもそのくらい徹底すべきかもしれません」
では、最低限知るべき規則とは何か。前出の上智大学法科大学院の北村喜宣教授はこう解説する。
「ひとつは、都道府県が定める漁業調整規則です。これは『いつ・どこで・何を・どの方法で・どの大きさで』と、捕獲できる条件が定められているものです。各地で条件が異なり、主に海上保安庁が取り締まりを行います。もうひとつは、漁業法で定められた漁業権の侵害に伴う規則。これは、漁場を管理する各漁協によって異なる、いわばローカルルールです。ダイバーや釣り人が各漁場を使用する場合は漁業権を使わせてもらうと考え、『遊漁券や協力費』を支払う場合もある。各地の漁業ルールが複雑に絡むため、正確な理解がしづらくなってしまっているのです」
◆ローカルルール違反で前科者となるリスクも
また、北村教授は不法侵入釣り人の増加について、「ソーラス条約の影響もある」と話す。ソーラス条約とは、海上交通の安全を確保する目的の国際条約のことだ。’04年の改正によって、500t以上の貨客船が停泊する埠頭や岸壁などには、フェンスや監視カメラの装着が求められた。
「特に都市部では、例えば漁業権を放棄した東京湾のような場所でも、この条約の安全管理のために人の立ち入りを禁止しています。そのため、締め出された釣り人が侵入してしまっているという面もあるでしょう。ただ、規制地域での釣りも密漁といえば密漁です」
では、これらのルールを破った場合、どのような罰則があるのか。漁業法に詳しい弁護士の阿部鋼氏によると、「漁業調整規則に違反した場合は、一般的には懲役6月以下・罰金10万円以下です。一方、漁業権の侵害罪は、親告罪(被害者が告訴してはじめて罪になる)で、漁協などが公訴しないと警察は動きませんが、逮捕された場合は20万円以下の罰金。懲役はありませんが前科になりますよ」
海は誰の物でもない、などの言いわけは通じないと知るべきだ。
【北村喜宣氏】
上智大学法科大学院教授。環境法政策学会常務理事、日本自治学会常任理事。環境法が専門で密漁に詳しい。『環境法』(弘文堂)など著書多数
【奥山文弥氏】
東京海洋大学客員教授。産学・地域連携推進機構、フィッシング・カレッジ主宰。釣り場の管理なども指導。共著に『サケマス・イワナのわかる本』(山と渓谷社)
取材・文/青山由佳 平野友季 西澤まどか 谷口金蔵 小川真吾
― 海で!川で![素人密漁者]が大暴れ【6】 ―
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