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貧乏でも幸せ? サッカーJ2、JFL、地域リーグの選手事情

 22日、サッカーJ2ザスパクサツ群馬の選手、後藤涼が15万円相当の中古ブーツを万引きしたとして窃盗の容疑で逮捕された。ネット上では「いい選手だったのになんで?」、「チームもそうだけど、サッカー界全体に迷惑」と怒りの声が溢れている。一方で「仮にもプロの選手なのに万引きとは夢がなさすぎる」、「サッカー選手ってそんなに貧乏なの?」とプロサッカー選手の生活を心配する声も多かった。同じく今月にはJ2のアビスパ福岡が資金繰りに困っていることが大々的に報道されるなど、近頃のサッカー界にはお金に関する暗いニュースが少なくない。5大会連続でW杯に出場し、欧州トップリーグへの移籍も当たり前となった日本サッカーだが、国内の現状はどうなっているのだろうか。

◆有給が取れるかどうかでメンバーが決まる!?

 現在日本サッカー界はJ1・J2を頂点とし、その下にプロ・アマ混在のJFL、そして各地域リーグが広がっているピラミッド構造になっている(実際にはそう単純には言い切れないが)。そこでトップのJリーグですら苦労しているなら、その下はさぞかし悲惨なのではないかと思う人も多いだろう。

「うちはプロチームですが、やはり選手にカネを払うのは大変ですよ。1番カネがかかるのは人件費ですから。チームには何人か元Jリーガーがいますが、地域と協力して住むところの家賃を下げたり、給料が少ない分、生活を助けられるように頑張っています」(某JFLチーム関係者)

 やはり名目上はプロ選手でも、皆が皆、きらびやかな生活を送っているわけではないらしい。するとアマチュアの選手の生活は更に苦しいのではないだろうか? 選手や関係者に話を聞いた。

「うちはチームの半分が母体となっている会社の社員で、残りはアルバイトや学生です。私は会社で働きながらプレーしていますが、毎日仕事が終わってから練習するのでキツいはキツいですよね。忙しいときは夜練習が終わってから会社に戻り、終電まで残業することもありますよ」(某JFL選手)

 定時まで仕事をし、みっちりと練習した後に会社で“ロスタイム”があるとは確かに大変だ。仕事の都合で練習に遅刻したり、早退しなければいけないこともあるという。普段の生活が大変なだけではなく、中には試合をすること自体が難しいチームもある。

「試合は基本的に土日ですけど、たまに平日開催があるんですよ。うちは全員違う仕事をしているので、有給が取れるかどうかでメンバーが決まってくるんです」(某地域リーグチーム関係者)

 仕事の「コンディション」まで関係してくるとは監督もさぞかし大変だろう。もちろん実際にプレーするのもアマチュアでは楽ではない。

「プレー環境は相当過酷ですよ。うちはホームにナイター設備がないから、夏場でも1番暑い真昼にキックオフしたり。選手ももちろんだけど、観客もタフじゃなきゃ無理(苦笑)」(某JFLチーム選手)

 出張先でもランニングを欠かさないなど、忙しい中で体調管理をするのは至難の業。また、道具や用具を集めるのも楽ではない。

「以前、雨の中でやった試合では両チームとも選手が転びまくってコントみたいでしたよ。本来なら環境に合わせてスパイクを替えたいですけど、いくつも買う余裕がないですから……」(某地域リーグチーム関係者)


◆プロよりも幸せなアマチュア

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ある地域リーグ所属の選手は少し恥ずかしがりながら「プロでもないのに子供からお年寄りまで応援してくれて嬉しいです」と語った(写真はイメージです。本文とは一切関係ありません)

 数々の困難が存在するアマチュア・サッカー界だが、意外にも回答者の表情は明るいのが印象的だった。皆、サッカーを楽しんでいるのがひしと伝わってくる。

「プロといっても練習場を転々としているところもあります。うちは会社のグラウンドが使えるので移動も楽です。環境は厳しいですけど、本気でサッカーがやれているので楽しいですよ。」(某JFLチーム選手)

 なかにはプロにはない、スポ根ドラマのような練習(?)をしている選手も。

「僕は代々うちのチームからバイトを雇ってくれる米屋で働いています。配達は体力勝負なのでコンディションを整えるにはちょうどいいですよ(笑)」(某地域リーグ選手)

 ただ、苦しいばかりではない。将来のことを考えた場合にプロの選手よりも見通しが立つという意見も多く出た。

「選手を辞めても会社員ですからね。福利厚生もしっかりしていますし、指導者やスタッフなど違った形でチームに関わることができます。夢を追いかけてプロになっても生活が苦しかったり、将来が不安な人も多いんじゃないですか?」(某JFLチーム関係者)

 アマチュアだからといって決して実力が低いわけではない。ここ数年、天皇杯でJFLの横河武蔵野FCがFC東京を、同じくJFLのAC長野パルセイロが名古屋グランパスを破るなど、「ジャイアント・キリング」と呼ばれる番狂わせが起きている。プロ選手も多く輩出するなど、アマチュアサッカーは日本サッカー界でも重要な役割を担っているのだ。

「天皇杯や、ただの練習試合でもプロと当たるときは『絶対に負けねえぞ!』って気持ちになりますよね。正直『俺たちと同じ環境じゃできないだろ?』って思います。与えられた環境でサッカーが出来ることにいつも感謝してますよ」(某JFLチーム選手)

 こうした事件やサッカー選手の年俸が話題になると、悲惨さばかりが強調されがちだ。しかし、外野の人間がサッカー選手には夢がないというのは勝手だが、当の選手たちは好きなスポーツを続けられる喜びを感じながらプレーしている事実にこそ目を向けてほしい。アマチュア選手は限られた時間や環境の中でプレーするのは当たり前のこと。プロ以上に過酷な環境の中でサッカーを続ける彼らが今のサッカー界の裾野を広げているのだ。

 海外や代表戦しか見ない人にとっては観客数が百人規模でバイトしながらサッカーを続ける選手などを見て「これで本当にプロ?」と映るかもしれない。だが、サッカーの本場南米や欧州では、むしろこういった下部リーグが当たり前であり、だからこそトップリーグを目指して選手達は練習に励み試合に臨むのだ。これが選手層を厚くすることに繋がるのは言わずもがな。取材を通して感じたのは、年俸などのお金や観客数だけで語ることへの違和感だ。苦しくとも楽しくサッカーを続ける彼ら下部リーグの選手たちの存在があってこそ、今のサッカー界は支えられているのではなかろうか。

 今度の週末、近くの競技場に足を運んでみてはどうだろう? テレビの中の国際大会に勝るとも劣らない、熱い戦いを観ることができるはずだ。

<文/SPA!貧乏スポーツ選手応援団 取材協力/林バウツキ泰人>




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