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【鴻上尚史】連続ドラマの脚本作業は地獄の日々

週刊SPA!連載「ドン・キホーテのピアス」<文/鴻上尚史> ―

ドラマ,脚本 そんなわけで、生まれて初めてテレビの連続ドラマの脚本を書くことになりました。1月から日本テレビで土曜夜9時から放送される、武井咲さん主演、EXILEのTAKAHIROさんが相手役の『戦力外捜査官』という作品です。

 原作は、似鳥鶏さんが書かれた小説です。

 最初に話をもらった時は、長編の推理小説なので、何話かに分けてこの物語を映像化するのかと思ったのですが、番組の次屋プロデューサーに「鴻上さん、やっぱり、一話完結スタイルが面白いでしょう。そう思いませんか?」と言われて、思わず「そりゃあ、そうでしょう。毎回、事件が起こって、笑いと推理で完結できたら素敵です」と答えてしまったので、11本分の一話完結のミステリーを書くことになりました。

 と、サラッと書いてますが、これはじつは大変なことだと、最近、気づきました。

 物語は、武井咲さんのようなお嬢さん刑事が戦力外のレッテルを貼られながらがんばり、それを、武闘派のイケメン刑事であるTAKAHIROさんが時にはぶつかり、時には助けながら事件解決に進むものです。

 キャラクター設定は(俳優さんに合わせて微調整はありますが)もちろん原作通りなのですが、物語が長編サイズでテレビに合わず、結局全部、新しく考えることになりました。

 毎日、パソコンに向かっています。人生の中で、こんなに執筆した時間はないんじゃないか、というぐらいずっと椅子に座っています。

 先日は、とうとう、腰が悲鳴を上げ始めました。生まれて初めてのことです。執筆の途中でトイレに行こうと思ったら、腰が「おっ! いきなり立ち上がるの!? そりゃダメだよ。こっちも都合ってもんがあるんだから。もう5時間も固まってるんだから。急に動けるわけないでしょ」なんて文句を言いました。結果、這うようにしてトイレに行きました。

 第一稿を書くと、プロデューサーやディレクターと、ああでもない、こうでもないと打ち合わせが始まります。

◆初めての連ドラ作業に四苦八苦の日々

 そこで、「おう、そっちの方が表現として洗練されてるね」とか「うむ、それは大人の事情ね」とか「おー、土曜の夜9時ってのはファミリー枠だから、(なにせ『怪物くん』なんかが放送された時間ですからね)もうちょっとくだいた表現の方がいいんだね」とか「ええ! 時間がオーバーしてる? 伸ばせないの? えっ? テレビは芝居や映画と違って伸ばせない!? そうなのね」とかさまざまな話が出ます。

 みんなじつにエネルギッシュです。そんな中でも、今まで入っている仕事はあるもので、『クールジャパン』のロケに行きました。

 富士山の世界遺産指定記念で、前日に山梨に泊まって、次の日、朝の6時にホテルを出て、青木ヶ原樹海だの富士の水を使った豆腐だの、いろいろと取材をしました。

 次屋プロデューサーから、「鴻上さん。何時ごろロケは終わるんですか?」という連絡がきました。「夜の8時には新宿に戻ります」と連絡すると「では、8時半ぐらいから日本テレビでシナリオの打ち合わせを」とメールが戻ってきました。

 わかりましたと答えて、無事ロケを終わらせ、シナリオの第二稿の感想やら直し打ち合わせを始めました。夜12時を過ぎて、3時ぐらいになっても、誰もなんの疑問もなく打ち合わせは続きます。僕は内心、「うむ。演劇でもまあ、夜中までの打ち合わせはあるから、そういうもんだな」と思いながら、さらに打ち合わせを続けました。で、朝の5時になっても、元気な打ち合わせは続き、「おう。24時間、おきてるなあ」と思いながら、だんだんと頭がボーッとしてきました。で、朝の6時半になった時に「すみません。あの、脳細胞がボチボチ文句言ってるんですが、何時まで続けるんでしょうか?」と思わず質問しました。

 次屋プロデューサーは、はっとした顔で「すみません、鴻上さん。じゃあ、続きは今日に。何時間ぐらい寝たいですか?」と微笑みながら聞きました。

 夕方から打ち合わせを再開し、深夜、帰宅すれば、脚本家の北川悦吏子さんからツイートが来ていました。

「鴻上さん、連ドラ書くんですね。地獄にようこそ^^」文章を読んで震えたのは久しぶりでした。

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