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「大阪・出直し市長選は橋下市長の狙い通り」中田宏衆院議員

中田宏衆院議員

インタビューに答える日本維新の会国会議員団国対委員長代理を務める中田宏衆院議員 撮影/山川修一(本誌)

 市長職の辞任と出直し市長選(3月9日告示、23日投開票)出馬を電撃表明していた橋下徹大阪市長が、来年4月からの移行を目指している大阪都構想のメディア向け説明会を開催してから1週間が過ぎた。

 普段は「どれだけ説明しても報じてくれない!」とメディアに対して威圧的な橋下市長が、これまで激しくやり合ってきた記者相手に、実に6時間以上かけて、自らの出直し市長選の正当性について言葉を尽くしてアピールする姿には少々驚かされたが、その後の世論調査を見ると、今回の辞任&出直し市長選について「評価しない」と回答した人が軒並み6割を超え、新聞各社の論評も「思いつき」(産経)、「大義ない」(読売)、「わかりにくい」(毎日)など、批判的に見る意見が大勢を占めたままだ。

 そもそもの発端は、大阪都構想の設計図作りをする「法定協議会」の場で、“アンチ橋下”の自民・民主・共産はもちろん、一時は選挙協力をするほど蜜月の関係にあった公明党にまで手のひらを返され、都構想の実現そのものが暗礁に乗り上げたからにほかならない。これには橋下市長も「死ぬまで公明の選挙区に出続ける」と恨み節をブチまけるほどだったが、ならば、出直し市長選は「橋下vs.アンチ橋下連合」の構図かというとそうではない。維新以外のすべての政党が候補者擁立を見送ったため、現段階で考えられる対抗馬は先の東京都知事選にも出馬したマック赤坂氏のほか、先週末に出馬の意向を示している元兵庫県加西市長の中川暢三氏くらいだ。中川氏に至っては、橋下市長が推し進めてきた「公募区長」に採用された現職の大阪市北区長であり、半ば身内のゴタゴタにも見て取れるため、余計に今回の市長選の構図をわかりにくくさせているのは間違いないだろう。

 こういった見えにくい要素が重なったことで、多くの有権者が「評価しない」と答えていると思われるが、果たして、このタイミングで出直し市長選に打って出る橋下大阪市長の真意は何なのか。元横浜市長の立場から、長らく行動を共にしてきた日本維新の会国会議員団国対委員長代理の中田宏衆院議員に話を聞いてみた。

――今回の大阪市の出直し市長選について、批判的に見る意見が多いが。

中田:私もそれは感じています。ただ、問題となっている都構想の制度設計を話し合う法定協議会の場では、自民、民主、公明、共産各党からの『反対意見にも耳を傾けるべき』という意見を真正面から受け止めて、慎重に慎重を重ねて手続きを踏んできました。にもかかわらず、野党は橋下NOという理由だけで、次から次へと嫌がらせを仕掛けてきたため、この法定協議会の場がまったく機能しなくなってしまったのです……。だから、都構想を進めていくには、橋下市長がここで民意を問う以外道はない、ということになった。「もう、ここまできたからには、四の五の言おうが前に進めていく』という、いわば橋下市長の決意宣言と言っていいでしょう。

――市長選を、「都構想の設計図づくり」の是非を問うためのワンイシュー選挙に仕立て上げているといった批判もある。

中田:’05年、郵政民営化法案を参議院で否決された小泉首相が、郵政解散に踏み切ったのとある意味同じ構図です。当時、小泉さんが打ち出した乾坤一擲の賭けに『なぜ法案を可決した衆議院を解散するのか?』『筋違いだ!』という声も多かったが、奇しくも、あのときに小泉さんに向けられた批判の声と、今回の橋下市長に対するそれは似ている。当時の郵政解散では『衆議院を解散しても、参議院の議会構成は変わらない』と言われたが、小泉首相の覚悟が、その後の参議院での郵政法案可決に繋がった……。今回も『出直し市長選をやっても、市議会の構成は変わらない』と批判のそしりを受けているが、そもそも地方の首長には議会を解散する権限がありません。となると、大阪市民に意思表示をしてもらうためには、これしか方法がなかったということです。

――大阪維新の会は少数与党とはいえ、もっとも多くの議席を有しており、野党各党に根回しするなどの議会対策はできなかったのか。

中田:僕も横浜市長の頃に経験しましたが、地方政治の場合、議会と首長が対立してしまうと、「首長の言うことは何であっても賛同できない」というところにいきついてしまいがちなんです。つまり、市民の目線でどうしても必要な政策であったとしても、反対ありきの議会は理屈をこねくり回して首長を追い詰めようとする……。都構想に反対を唱える勢力も、ただただ「橋下の思い通りにはさせない」という結論ありきで法定協の席に着いていたんです。しかも、現存の仕組みや手直しについては有権者も想像がつきやすい一方で、まったくゼロの状態から新しいルールを作っていくとなると、想像することが難しいだけに、どうしてもリスクばかりをまくし立てられてしまう。ましてや、そもそも野党の都構想反対論は「橋下の思い通りにはさせない」というところからスタートしているので、丁寧に説明すれば理解が得られるという話でもない。もちろん、この背景には橋下市長に往時の勢いがないことも影響している。議会は、市長の支持率が高いときは、楯突いてもマイナスだと考え、市長に嫌味を言いながらも都構想の議論に参加していた。ところが、今は市長に対して反対に回っても、自分たちは悪者にはならないと考えているわけです。地方議員は、『赤信号、みんなで渡れば怖くない』の典型ですから。

――出直し市長選について「評価しない」という答えが多いのは、やはり「わかりにくさ」がもっとも大きな要因なのではないか。

中田:僕も橋下市長を単に擁護するのではなく、日本の変革を求めて行動してきた同志として、説明に説明を重ねていく以外ないと思っています。確かに、市長選を行っても市議会の構成は変わらないが、市民の真意を問うにはこれしか方法がない……。実は今度の選挙は、橋下氏のこうしたやり方も含めて、有権者に対して『それでも大阪市長として認めてくれますか?』と意志表示してもらう機会にもなっています。だから、仮に対立候補が立たず、不戦勝でも選挙に勝ったなら、民主主義という仕組みのうえでは改めて都構想への信任は得たことになる……そんなふうに橋下氏は考えているのではないか。

――国政に目を向けると、維新の会は時に「自民党の補完政党」と揶揄されるほど政権与党と良好な関係を築いているが、維新の城下町である大阪では、なぜこうもギクシャクした関係が続いているのか。

中田:橋下氏のやろうとしていることが、制度の手直しではなく、制度そのものを新しく作り変えるという根本論だからでしょう。国政に目を向ければ、政府与党のやろうとしているのは、やはり手直し論なんです。だから、根本的に変えねばならない部分については、我々維新の会は相当自民党に反発してますよ。例えば、特区構想ひとつ取っても、これまでにない特区構想を提案している……。結局、今の政権がやっているのは、役人に言われるがまま規制を手直しした程度のもの。農業にしても、年金制度にしても、自民党は根本的に変えようとはまったくしていないんです。だから、根本的なところに手を着けないという意味では、国政における自民党と大阪市における自民党は同じですよ。

――当初のスケジュールでは、今秋に住民投票、来年4月には都構想に移行するはずだったが、今回の市長選で日程にズレが生じるのではないか。

中田:橋下市長の狙い通りで、むしろ、このタイミングで市長選を行えばスケジュールが大幅に遅れることを防げる。仮に、住民投票にかけようという段になれば、都構想実現の8合目といったところですが、ここで否決されてスタートラインまで戻されると大幅な遅れを余儀なくされる。今は6合目くらいのところで、ここでさらに上に登るのか、それとも引き返すのか……それを有権者に問いましょうということです。都構想が実現すれば二重行政がなくなり、確実に無駄な支出が削減できます。府と市が無用の争いをすることがなくなり、物事がスピーディに決まっていく……だけど、この旧態依然としたシステムのなかで恩恵を受けてきた人たちは、どうしても現状を変えたくない。当然、徹底的に反対してきます。水道事業の統合も、市営地下鉄とバスの民営化も、市立幼稚園の民営化も、すべて、利害関係者がいるわけですから。

 大阪維新の会旗揚げから、国に物申す!の姿勢で既得権益と“ケンカ”し続けてきた姿が有権者の心を捉え、全国的な“橋下フィーバー”を呼んだわけだが……。その後、国政進出に伴い、旧太陽の党系国会議員らとの軋轢が生まれ、昨年の「慰安婦発言」で支持率低下を余儀なくされた経緯もある。

 大阪都構想は、政治家・橋下徹の「1丁目1番地」の政策と言っていいだろう。果たして、この「原点回帰」の戦いの先に、“第2次橋下フィーバー”は訪れるのだろうか。 <取材・文/山崎元(本誌)>




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