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中東拷問事情 民主化の影で拷問は増えていないか?

シリア北部の大都市アレッポの街

 一人の男性が焼身自殺したことをきっかけにはじまった、チュニジアのジャスミン革命。その火はエジプト、リビア、シリア、イエメン、バーレーンなどへと広がってゆき、中東各国で民主化運動が政権に影響を与えている。

 チュニジア、エジプトは犠牲者は出たものの非暴力で平和的な政権交代(というか“独裁者”の引退。実際の新政権作りはこれから)が行われたが、リビアは内戦状態に突入し、シリアでは民衆のデモを弾圧し死者が100人以上出ている。

 5月19日付けの朝日新聞に、リビアの元秘密警察幹部が「政治犯を数千人は逮捕した」と語っていたインタビューがあったが、シリアにも秘密警察が存在する。これは推測になってしまうが、おそらく民衆デモの主導者や参加者が逮捕、拘留されて苛烈な拷問をたった今も受けている可能性が非常に高い。というのも、「大統領の悪口を言った」だけで拷問を受けてしまう国だからである……。

 フリーライターの末澤寧史氏は、かつて拷問を受けた経験があるシリア人と出会ったことがあるという。

「シリアを旅していたときに友人になったシリア人がいるんですけど、『大統領の悪口を言った』という密告を誰かがしたらしく、突然、秘密警察に拘束されたそうです。しかも、本人にはまったく身に覚えのない話だったということで、拷問から解放されても半年は抜け殻のような状態だった、と話してくれました」

 密告ひとつで、拷問されてしまうとは、独裁国家の恐ろしさを象徴するようなエピソードである。では、彼は一体どんな拷問を受けたのかを知りたいところだが、「実は当時、僕は学生で、彼が『思い出すのもつらい』と言っていたので、具体的にどんなことをされたのかは申し訳なくて聞けなかったんですよね。ライターになった今だったら絶対に聞き出しているんですけど」(末澤氏)とのこと。

 そこで、国が変われば拷問のやり方も変わるらしいが、『漂流するトルコ』(小島剛一著)という本に80年代にトルコで行われていた拷問の様子が書かれているので、参考までに一部引用、要約して紹介させていただく。小島氏はフランス在住の言語学者、民俗学者で、トルコから亡命した人物を支援した際に書かせた亡命申請書の中に出てくる拷問の様子だ。

・左手の小指と右足の親指に針金をまかれ、軽い電流を流された
・ゴム状のもので縛られた
・ファラカ(足の裏を棒やゴムなどで打ちつける)
・パレスチナ吊り(開かせた両腕を長い棒に縛りつけ、吊り上げる)
・男性器に電線を巻きつけられ、もう一方の電線の先を乳首に押し付けられ、電圧をかけられた

 この最後の男性器への電流がもっともつらい拷問らしく、性的に不能になってしまうという。最終的には回復するというが、半年、場合によっては1年以上、不能になってしまい、肉体的苦痛はもちろんのこと男としてのプライドをズタズタに傷つけられてしまうらしい(念のためにお断りしておくが、このトルコの拷問は20年以上前のものであり、現在も行われているかどうかは調査できていない。ただ、現在のトルコは非常に民主化が進んでいることは間違いない事実である)。

 かつてのイラクではフセイン大統領の息子、ウダイが拷問好きでサッカーのイラク代表が国際戦で負けると、拷問されていたという話もある。独裁国家、秘密警察とくれば、拷問はワンセットになっているに違いない。

シリアのアサド大統領は今回の民衆デモに対し「非常事態宣言」を“解除”するなど、民衆懐柔策を打ち出している(シリアは50年以上「非常事態宣言」を発令したままになっており、これが秘密警察が政治犯を逮捕、拘留することの根拠になっていたようだ)。これにより、不当な逮捕、拘留がなくなっているのならばいいのだが……。

(追記)
国連では、シリアを非難する決議案が作成されており、そこには「シリア政府は穏健なデモ参加者、人権擁護活動家、ジャーナリストに対して殺害、法に基づかない拘束、拷問などの人権侵害活動を行っており」という一文があると報道された。やはり、現時点ですでに拷問は行われているようだ。


文/織田曜一郎

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