日本のゴルゴはここにいるのに…「ライフル射撃」観戦の問題点とは

~今から始める2020年東京五輪“観戦穴場競技”探訪 第2回~

フモフモ編集長と申します。僕は普段、スポーツ観戦記をつづった「スポーツ見るもの語る者~フモフモコラム」というブログを運営しているスポーツ好きブロガーです。2012年のロンドン五輪の際には『自由すぎるオリンピック観戦術』なる著書を刊行するなど、知っている人は知っている(※知らない人は知らない)存在です。今回は日刊SPA!にお邪魔しまして、新たなスポーツ観戦の旅に出ることにしました。

⇒前回の話は『秩父山中(長瀞射撃場)で見た「ライフル射撃」は観客2名!』http://nikkan-spa.jp/848051

 五輪で行なわれる射撃の種目は大きくわけてライフル射撃、クレー射撃のふたつ。ライフル射撃にはライフルとピストルの2種類の銃が含まれており、それぞれ一定の距離から標的を狙って撃ち、どれだけ正確に的に当てられるかを競います。クレー射撃は飛んでくる皿を散弾銃で撃つ種目です。その大きな分類の下に、空気銃を使う種目と火薬を用いた銃を使う種目があったり、距離が長かったり短かったり、皿が飛び出る角度や枚数が違ったりと、いろいろな種目があるのです。

伏射姿勢で遠くの的を狙う選手

 この日に実施されていたライフル射撃においては「立射」(りっしゃ/立ったまま手でライフルを支えて撃つ)、「膝射」(しっしゃ/片ヒザを立て、ヒザでライフルを支えて撃つ)、「伏射」(ふくしゃ/腹ばいになって地面でライフルを支えて撃つ)という3つの射撃姿勢があり、どの姿勢で撃つかによってもまた細かく分類されます。わかりやすくゴルゴで説明すると、標的を目の前で撃ち殺すときが立射、隣のビルくらいの距離から撃ち殺すときが膝射、1ヶ月くらいチャンスを待って粘っているときが伏射です。ん? 逆にわかりにくいですかね。参考までに、以下にまとめてみました。

【リオ五輪で実施される射撃種目一覧】

<ライフル射撃:10種目>

●エアピストル10m(男女)
10メートル先の的を、空気銃を用いて立射片手射で撃つ。男子は60発、女子は40発。時間をかけてパーン、パーンと1発ずつ撃つ。

●ピストル50m/25m(男子は50m、女子は25m)
50メートルもしくは25メートル先の的を、立射片手射で撃つ。男女とも60発。女子は全体のうち30発を精密射撃(時間をかけて1発ずつ撃つ)、30発を速射射撃(短時間で5つの標的を連続で撃つ)に充てる。

●ラピッドファイアーピストル25m(男子のみ)
25メートル先に並んだ5つの的を、速射用のピストルを用いて立射片手射で撃つ。合計60発。パンパンパンパンパンと5発連続で撃つことを繰り返す。

●エアライフル10m(男女)
10メートル先の的を、空気銃を用いて立射で撃つ。男子は60発、女子は40発。時間をかけて1発ずつ撃つ。

●ライフル3姿勢50m(男女)
50メートル先の的を、立射・膝射・伏射の三姿勢で撃つ。男子は各姿勢40発ずつの計120発、女子は各姿勢20発ずつの計60発。時間をかけて1発ずつ撃つ。

●50mライフル伏射(男子のみ)
50メートル先の的を、伏射で撃つ。合計60発。時間をかけて1発ずつ撃つ。

<クレー射撃:5種目>

●トラップ(男女)
15メートル先で飛び出る皿を散弾銃で撃つ。選手は5つの横並びの射台(撃つときの場所)を移動しながら、さまざまな角度での射撃を行なう。男子が125枚、女子が75枚。

●スキート(男女)
半径約20メートルの半円状の競技場(時計の3時から9時に相当)で、半円の両サイドから12時の方向に向かって飛び出る2枚の皿を散弾銃で撃つ。選手は半円の円周上にある7つの射台(9時、8時、7時、6時、5時、4時、3時の位置)と、円の中心にあたる位置の射台の合計8ヶ所を移動しながら、さまざまな角度での射撃を行なう。男子が125枚、女子が75枚。

●ダブルトラップ(男子のみ)
約15メートル先で飛び出る2枚の皿(※2枚だから「ダブル」)を散弾銃で撃つ。選手は5つの横並びの射台を移動しながら、さまざまな角度での射撃を行なう。合計150枚。

◆大きな問題に気づく

 この日、行なわれていたのはライフル射撃の「ライフル3姿勢50m(女子)」「ライフル伏射50m(男子)」「エアライフル10m(男女)」の4種目。朝から午後までライフルを撃ちまくり、世界大会に派遣するライフル自慢を決めようというものです。日本のゴルゴはここにいる。そんな一日なのです。

 射撃の競技というのは、とかく時間がかかります。この日の種目も、それぞれ1時間から2時間くらいをかけて撃っていきます。種目によっては、それを日をまたいで繰り返すこともあります。集中力が必要な競技なので、1発撃っては息を吐き、また集中力を高めては1発撃つことの繰り返し。

 選手ごとに撃つタイミングもまちまちなので、誰かがド真ん中に当てたからといって大騒ぎするわけにはいきません。いや、大騒ぎしてもいいのかもしれませんが、何せ観客が僕ら素人2名だけなので、現場の感じがつかめません。結構な音量でパンパンしているわけですから、僕が「ねーらーいーうーちー!」とか中日ドラゴンズのチャンステーマを歌って応援してもいいのかもしれませんが、その結果盛り上がるのか撃たれるのかはわかりません。わからないので、静かに息を殺して見守ります。

 そんな中、大変大きな問題に気づきます。何と、撃ったあとの肝心の場面、「的に当たったかどうか」がまったく見えないのです。50メートル先の的ならそんなもんかなとも思いますが、10メートル先の的でも全然見えないのです。血が出るとか、オモチャが棚から落ちるとか、そういうわかりやすいリアクションが皆無。着弾の煙すら出やしません。

 デジカメの望遠機能で的を拡大しても一向に当たりハズレが見分けられない僕は、この的を狙って撃ち、当たりハズレを確認する選手たちの超人的な視力に驚きます。よく見えますね。大したものですね。鷹みたいですね。心の中で拍手喝采です。しかし、選手たちが撃ち終わるたびに、ちょいちょい横を見るので、何を見ているのかと覗き込んでみると……

⇒【写真】はコチラ http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=848114

選手も当たりハズレを手元のモニターで見てた

「手元のモニター見とるね……」

 何と、選手ひとりひとりに専用のモニターが用意されており、撃った弾がどこに当たったか、拡大図が表示されているではありませんか。「結局、撃った本人もモニターで見ているのか」という納得いかない感。もちろん手応えで何となくはわかるのでしょうが、最終的には選手自身もモニターを見るくらいですから、僕らが的を凝視しても無意味でしょう。遊園地とかにある、球が当たるとギャーと鳴く鬼の人形は、本当によくできた演出なんだなと改めて実感します。

 さらに、問題はありました。この日の実施種目では、一斉にたくさんの選手が横並びで競技に臨んだのですが、その距離がものすごく長い。端の選手から反対端の選手までは100メートルほどあるでしょうか。ある選手を見ているとき、遠くのほうで撃っているライバルの状況はまったく確認できないのです。的も見えない、ライバルも見えない。「全然面白くな……」と、ノドまで言葉が出掛かる僕。結局、午前中はそんな感じでどうしたらいいのかわからないままに終わります。

 午後の競技に向けて、作戦の練り直しを余儀なくされた僕と担当編集者。昼飯でも食べながら作戦会議をしようとするも、チケットも手荷物検査もないだけあって、ここにはスタジアムグルメ的なものなど一切ありません。食料絶無。売店皆無。選手たちは取り寄せた弁当を控室で食べており、「食い物持参」は半ば常識である模様。僕は会場で見つけた唯一の食糧と言える「コーラの自販機」としばし睨めっこするも、無念の下山を余儀なくされます。厳しい、厳しすぎる観戦環境です。

⇒『「ライフル射撃」の楽しみ方の極意はモニター観戦にあり!』http://nikkan-spa.jp/848133 に続く

自由すぎるオリンピック観戦術

スポーツイベントがあるごとに、世間をアッと言わせるコラムを書き続ける、スポーツ観戦ブログ『フモフモコラム』の中のひとによるオリンピック観戦本




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