「ライフル射撃」の楽しみ方の極意はモニター観戦にあり!
~今から始める2020年東京五輪“観戦穴場競技”探訪 第3回~
フモフモ編集長と申します。僕は普段、スポーツ観戦記をつづった「スポーツ見るもの語る者~フモフモコラム」というブログを運営しているスポーツ好きブロガーです。2012年のロンドン五輪の際には『自由すぎるオリンピック観戦術』なる著書を刊行するなど、知っている人は知っている(※知らない人は知らない)存在です。今回は日刊SPA!にお邪魔しまして、新たなスポーツ観戦の旅に出ることにしました。
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昼食を経て、午後13時15分から始まる競技に合わせて、再び山を登ってきた僕。そして、ようやく僕は認めます。認めざるを得なくなります。ココに通常の観戦常識を持ち込んではいけないのだということを。イスに座り、派手な演出に喜び、競技の成り行きを見守り、グルメに舌鼓などと考えてはいけない。根底からその考えは間違っていたのです。
たどり着いた答え。それは、現場まで行っているぶん大きな盲点ではありましたが、「モニターを見ること」でした。周囲をよく見てみたら、選手が当たりハズレを確認するモニターを見るように、コーチや関係者も場内モニターの周囲に群がり「モニターを見ていた」のです。みんな「モニターを見ていた」のです。
このモニターだけを見るようにしてから、俄然試合が面白くなってきます。合計40発くらいの弾を撃ち合う中で、1発ずつの差はごくわずか。多くの選手が10点×40発で400点くらいを取り、最終的には1点とか2点の差で決着がつくのですが、実力伯仲のライバル同士ではさらに一桁下の0.1点単位で勝負がわかれます。大体真ん中に当てた上で、「弾半個ぶん」とかの差で少しずつ差がついていくのです。
モニターに表示される弾痕を見て、その小さな浮き沈みを見守る。さらに、先に弾を撃ち終えた選手の得点と、まだ競技をつづける選手の点差を見ながら「あと何点必要」かを考えていく。この日の競技でも、2位と3位を決める争いがデッドヒートとなり、撃つペースが遅かったほうの選手が「最後の一発でド真ん中に当てれば逆転」というヒリヒリした状況も生まれていました。
◆思いもかけず出会った美女選手
そうした刻一刻と変わる状況を見守るには、散らばった選手を見るより、モニターを見るほうが都合いい。モータースポーツなどでも、広いサーキット全体を見ることはどうせ不可能なので、中途半端にコースを見るよりも「クルマの通過タイムなどが表示されるモニター」だけを見ているほうがわかりやすかったりするものですが、まさにそんな感じ。
そうして全体を俯瞰する中で、やけに高得点を挙げている選手や、何となく気になるイケメンに出会うことができたなら、さらに観戦にのめり込んでいくことができるかもしれません。まさに最初は見えなかった的が、じょじょに見えてくるように。実際、この日の観戦において僕は、清水綾乃さん(自衛隊体育学校)という新たな恋人と出会うことができました。
僕が午後の競技をモニターにへばりついて観戦していると、1位で競技を終えた選手がそこにやってきたのです。グレーのパーカー姿の小柄な美女。それが清水さんでした。自分の順位をモニターで確認した清水さんは、関係者から「ようこそ世界へ!」と日本代表入りを告げられていました。その歴史的な瞬間、僕は清水さんの真横にいました。僕は清水さんと、その瞬間を分かち合ったのです。その瞬間の清水さんは、何だかすごくイイ匂いでした。
タダの美人であれば、ここまでときめかなかったかもしれません。しかし、僕はモニターを見ていたおかげで、この美人が1位の選手であることをわかっていました。「1位が美人」という奇跡が、僕の胸に強く刻まれました。リオ、東京まで清水さんを射撃の推しメンにしよう、僕はそのとき決めたのです。このような出会いを得られたのも、僕がモニターを見ていたからこそ。ありがとう、モニター!
こんな調子で終えた初の射撃観戦。まずは、現場の空気を感じること。そして、とにかくモニターを見ること。「この際、射撃でいいです!」というみなさんには、ぜひこのコツを覚えていっていただきたいもの。パーンパーンという銃声と火薬の匂い。選手たちの発する緊張感。現場にしかないものを肌で感じながら、目はモニターを凝視する。そのとき、きっと射撃の面白さが見えてくるはずです。「結局モニター見るなら家で観ても一緒やん」という言葉が聞こえてきそうですが、空気を感じるというのが「五輪現地観戦」の最大の思い出ですからね。何を見たかは、そんなに大した問題ではないのです。
射撃会場には、射撃会場らしさ……野球場やサッカースタジアムにはない独自の文化があります。ゴミ箱に大量に廃棄された装弾缶ケースや、穴だらけの標的。「銃口は絶対に人に向けるな」という厳しい口調の注意書き。土産物として販売される実弾カラ薬莢によるキーホルダー。「完全銃所持マニュアル」などヤバめのタイトルの参考書籍が並ぶギャラリー。行けば必ず話のタネになります。僕らの物見遊山のように遠くまで行こうという気はしない人にこそ、むしろ五輪がチャンスかもしれません。五輪なら「一生に一回だけ観てみる」気にもなるでしょう。陸上でもサッカーでもなく、あえて射撃。あえて射撃も悪くない。ぜひ東京五輪では会場に足を運んでみてはいかがでしょうか。五輪なので大丈夫だとは思いますが、一応食料は持参のうえで。
『自由すぎるオリンピック観戦術』 スポーツイベントがあるごとに、世間をアッと言わせるコラムを書き続ける、スポーツ観戦ブログ『フモフモコラム』の中のひとによるオリンピック観戦本 |
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