世界屈指の景観をブチ壊す「中部横断自動車道八ヶ岳南麓新ルート」に住民は大反対
景観・歴史・文化・環境・生態系などの破壊に目をつぶり、ひっそりと進行している開発計画は数多い。それは本当に必要な事業なのか? 地元住民はどれだけ情報を与えられているのか? 全国各地で進められている、“あまり知られていない”開発計画の現状をリポートした!!
◆世界屈指の景観をブチ壊す住民大反対の高速道路
~八ヶ岳(山梨県)観光価値を下げる景観破壊~
須玉・長坂など7町村が合併した山梨県北杜市は、八ヶ岳山麓の高原地帯に位置し、自然豊かな観光地でもある。この地に魅せられて移住した神谷卓郎さんの家の周辺は、「中部横断自動車道・長坂~八千穂(34km)」の予定地になってしまった。そのため、神谷さんは美しい景観の写真をブログで紹介しながら、高速道路計画の是非を問題提起している。
「ここ八ヶ岳南麓は、南を見れば、田園風景の向こうに富士山があります。西には甲斐駒ヶ岳や鳳凰三山の南アルプス連峰が目に入り、北を向けば、八ヶ岳が聳えていて北風を防いでくれます。こうした景色が高速道路建設で分断されていいのでしょうか」(神谷さん)
◆観光業者も住民も建設に反対が多数
八ヶ岳南麓には神谷さんのような都会からの移住者も多い。山梨県が「移り住みたい県ナンバーワン」に選ばれたのは、こうした景観の賜物といえる。長坂~八千穂間の事業費は2300億円にも及ぶが、高速道路開通による時間短縮効果は微々たるもので、交通量も少ない。採算がとれないことは確実だ。住民アンケートでも、半数以上の北杜市民が高速道路より国道141号整備拡充を望んでいることが判明。国交省は「八ヶ岳の観光地・清里にもメリットがある」と訴えているが、当の清里の観光業者(清里観光振興会)へのアンケートでは「8割以上が建設反対」という結果に。高速道路建設による利便性向上よりも景観破壊のマイナスが遥かに大きいと見ているのだ。
「’12年11月に高原地帯を突っ切るルート構想が明らかになりました。この景観を失えば、観光業や不動産業など地域経済にダメージを与えるのは確実です。しかし北杜市も県も国交省も、現行計画を見直す姿勢は全くありません」(見直し派住民)
地元では、「中部横断自動車道八ヶ岳南麓新ルート沿線住民の会」が結成され、今でも根強い反対運動が続けられている。
「二地域居住」を推進している山梨県や北杜市、そして「八ヶ岳観光圏」や「日本風景街道」を提唱する国交省は、世界屈指の景観を破壊する高速道路計画との整合性をどうとるつもりなのだろうか。
― こっそり進む[ニッポンの風景]破壊計画 ―
この特集の前回記事
ハッシュタグ