雑学

「専業主婦うつ病」の苦しみ。病休も取れず、家族のために家事をしなければならなくて…

 ここ10年、うつ病が「心の病気」であるという認識が広まり、街にはメンタルクリニックが目立つようになったという指摘がある。事実、2002年には国の医療計画の対象疾患に精神疾患が加わった。

 精神科医である野田順子氏は著書『女性のうつ病』(主婦の友社)の中で、男性より女性の方がうつ病に罹りやすいと警鐘を鳴らす。

<女性ホルモンの働きが、うつ病と大きく関係していることがわかっています。女性ホルモンは月経の周期に伴って変化し、閉経に至ると急速に減少します。これらのホルモンの波に一致して、月経前不快気分障害、産後うつ病、更年期うつ病などを発症し、女性特有のうつ病を増やす原因になっています>

 うつ病が、単に怠けている・やる気がないといった認識から、脳やホルモンによって引き起こされる医学的疾患という認識に変わっていっていることは、大きな進歩であるといえよう。

◆専業主婦でもうつ病になる

専業主婦でもうつ病になる だが、実際にうつ病になった女性の苦しみはまだまだ大きい。

 千葉県に住む専業主婦の野田晴美さん(仮名・51歳)。彼女は、公務員の夫と難関大学に通う一人息子を持ち、タワーマンションの最上階で暮らしている。

 傍から見れば何不自由ない幸せな暮らしだが、実は彼女は長年うつ病と戦っていた。

◆家族のために肉を焼き、自分はゼリーをすする

「食欲は全くありませんでした。でも、家族の料理は作らなければなりません。ご飯の炊ける臭いや肉の焼ける臭いに吐きそうになり、何度もトイレに駆け込みました。夫と息子がポークソテーを頬張っている横で、私はぐったりしてゼリーを啜っていたことは数えきれません」(野田さん)

 病休も取れず、家族のために家事をしなければならない専業主婦。うつ病になってもなお、責任を果たそうとする野田さんの真面目さが、病気を発症させ、治癒を遅くしたのかもしれない。彼女の気遣いは、家庭の外にまで及んだ。

◆母親がうつ病であることで、息子が不快な思いをするかもしれない

「うつ病の母親を持っていることが周りに知られたら、息子が悪口を言われたり過剰に気を使われたりして、不快な思いをするのではないかと不安でした。主婦友達や親戚には言えず、夫と息子が出かけた後、ひとりで泣きながら壁を伝って家の中を何周もしたこともあります」(同)

 専業主婦のコミュニティの狭さが、彼女の孤独を深めてしまった。頼りになるはずの夫も、無知と世間体から彼女につらく当たった。

◆世間体を気にして、医療費補助の制度を使わせてもらえない

「医療費が高額になっていたため、市の医療費補助の制度を使おうとしました。しかし、市役所勤めの夫は、妻がうつ病であると職場の人に知られるのを嫌い、許してくれませんでした。夫が私を恥だと思っていることが悲しく、医療費で家計は苦しくなりました」(同)

 うつ病が「恥ずかしい病気」という認識が一部で残っているとの指摘もある。それが患者を孤立させ、治るものも治らなくしてしまう。

 うつ病が誰にでも起こりうるありふれた病だと理解されれば、彼ら・彼女らの苦しみも軽減されるのかもしれない。 <取材・文/高田のばら>

女性のうつ病

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