【マカオ発】空前の好景気で“夜の世界遺産”も高騰中
2002年にカジノ経営権を外資に開放して以来、驚異的なスピードで観光客が増え続けるマカオ。2000年に年間約800万人だった観光客数は、わずか10年で3倍以上にも増加している(2010年データ:約2496万人/新華社調べ)。
もちろん、カジノの業績も凄まじい。2006年にはすでにラスベガスを抜き、世界1位の座をキープし続けているが、2010年度のマカオのカジノ関連収入は、過去最高の235億ドルに達したのだ。これは2009年比で約58%の大幅増となる。
日本人の間でも、ギャンブル好きの男性客はもちろん、世界遺産を効率良く見て回れるとあり、女性や高齢者の間でも人気の高い観光地となっている。
そんななか、マカオの“夜の世界遺産”である異変が起こっているという。
「かの有名なリスボアホテルの『回遊魚』の価格が、今年の春節(2月)あたりから値上がりし、1000香港ドル(約1万1000円)になったんです。ここ4~5年、ずっと800香港ドルだったので、気軽に遊べたんですが、2000円の差とはいえ、お得感がなくなりましたね」(日本人のマカオ通)
説明しよう。「回遊魚」とは、マカオいちの老舗カジノホテルであるホテル・リスボアの1階部分のレストラン&ショッピングアーケードで客を引く売春婦たちのこと。ピーク時には30~40人の売春婦(すべて中国人)が顔見せするかのごとく廊下をグルグルと歩くことから、日本人の間でこの呼び名が定着したのだ。プレイスタイルは日本のちょんの間と同じで、彼女たちが長期契約で借りている同ホテル内の部屋に行き、セックスをするのだ。時間は20~30分で、1発終われば終了となる(マカオでは売買春は違法ではない)。
ちなみに回遊魚のレベルは相当高い。皆ファッションモデルのようなスタイルで、韓流アイドルのような美貌の持ち主も少なくない。「大陸のトップレベルの売春婦が集結する」(同)というから、推して図るべしだろう。
値上げの真相を確かめるべく、さっそく現地へと向かった。平日の夜だというのに、1階部分には中国人や欧米人、日本人など多数の男性客が品定めをしている。ここでくるくる歩く1人の売春婦と目が合った。こっちへ向かってきて、「私でどう?」と誘ってきたところ、交渉するフリをして質問をぶつけた。
記者「君、いくら?」
女「1000香港ドルよ」
記者「前は800香港ドルだったじゃん」
女「値上がりしたのよ。今はみんなこの値段だよ。他のコにも聞いてみれば?」
記者「ほんとかな?」
女「ホテルの部屋が値上がりしたからね。私たちも部屋代が払えなくなっちゃうわ」
この後、別の売春婦にも同様の質問をしたが、皆同じような答えが返ってきた。また“日本人価格”を提示されている可能性もあるので、大陸中国人客の交渉現場に聞き耳を立ててみた。が、同様の価格を提示していた。
「マカオは今年に入り、平日休日関係なくホテルの予約が取りづらい状況です。宿泊費も上昇傾向にあり、平均するとどのホテルも昨年同時期に比べ、2割ほど高くなっています」(同)
中国経済は今、インフレ傾向にある。大陸からの観光客が8割以上を占めるマカオも他人ごとではないようだ。共産党政権の鶴の一声が、マカオの売春婦の値段にまで影響を及ぼすとは、興味深い話ではある。
取材・文/バーナード・コン(本誌特約)

地球の歩き方 マカオ 2011〜2012

これがマカオが誇る「回遊魚」たち。日本人にも大人気だ
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