更新日:2015年12月04日 18:29
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猪瀬直樹、安保法制成立に「安倍首相の行動は日本の正義不在の状況を後押しした」

戦後、アメリカに基地とカネを差し出すことで、経済最優先のもと“ディズニーランド化”した日常を謳歌する日本では、語るべき正義は失われた……。そんな日本の正義を、作家・猪瀬直樹氏が紐解く。誰が意思決定をして誰が責任を取ったのか――不決断をよしとする国民性、同調圧力に屈しやすい「空気」を炙り出す。前回「日本人にとって正義とは何か?」に続く後編。 猪瀬直樹 日本人にとって正義とは何か? 正義はいつ取り戻せるのか。今夏、安倍政権は安保法案を成立させたが、その陰で、日本をアメリカの“半属国”にしている元凶「日米地位協定」は手つかずだった。 「安倍首相には、アメリカと戦う余地が多少なりともあった。安保法制は首相の発案のように見えて、実はアメリカの意向だった。ならば、安保法制成立をカードに、日本がもう少し有利になるような交渉はできたはず。戦後、この国から正義が失われた歴史を振り返れば、国家として自立することが日本に正義を取り戻すことに繋がる。ところが安倍首相の行動は、結果的に、日本の正義不在の状況を後押ししたことになる。  日本と同じく、第2次世界大戦の枢軸国で敗戦国のドイツとイタリアにも米軍基地があり、アメリカとの間に地位協定を結んでいます。だが、日本の米軍基地が事実上の治外法権で、米軍機に航空法が適用されないのに対して、ドイツでは米軍基地に国内法が適用され、イタリアは米軍基地の管理権を有し、イタリア軍司令官に許されて米軍が訓練をしている。  実は、ドイツとイタリアの地位協定も日本と同様、自国に著しく不利な“不平等条約”だったが、数回にわたる粘り強い交渉で改定していったのです。両国は米軍基地を受け入れても、アメリカに主権を譲るようなことはしなかった。翻って、日本の安保法制議論にはこうした視座が欠けていた」  思想家・東浩紀氏との対談本『正義について考えよう』(扶桑社刊)には、東氏の「猪瀬さんは一貫して自民党を支持」との言葉に猪瀬氏が「自民党なんか全然支持してないよ! 民主党もね」とキレ気味に反論するくだりがある。
猪瀬直樹 日本人にとって正義とは何か?

自らアップした暖炉の動画をスマホで眺める猪瀬氏。ツイッターを駆使した副知事時代から、ITはお手のもの?

「僕は保守本流じゃないし、そもそも保守とかリベラルという発想がない。いわば異端。ゆえに孤立無援だったし(苦笑)、徒党を組まず、企画を立案して物事を進め、そのために決断する……そんな仕事をしてきただけなんだけどね。ん!? 動画の再生数、もう2000を超えたよ(笑)」  決断して自立を獲得した先に、正義が宿る――猪瀬氏のこれまでの仕事は、日本の正義を考えるうえでなかなかに示唆的だ。 取材・文/齊藤武宏 撮影/遠藤修哉(本誌)
【財団法人・日本文明研究所シンポジウム】
「日本文明と地方創生―『強み』=『弱み』で読み解く日本の勝ち残り戦略」
12月8日18時30分開場 19時開始
於・日本経済大学大学院246ホール
http://synapse.am/contents/s/event-1208_nihonbunmei

正義について考えよう

同調圧力に屈しやすく、リーダー不在でも自ら意思決定を下すこともできない。不決断と総無責任体制の日本には、正義は存在しないのか。安保法制、改憲論議、福島と沖縄の宿痾、東京五輪問題、ジャーナリズム論、文学部不要論……日本が直面する諸問題を「正義」を軸に激論を交わす

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