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熊本地震を口実に、日本の「ナチス化」が進む危険性

熊本地震の被害状況を視察する安倍首相

熊本地震の被害状況を視察する安倍首相

首相が「緊急事態」を宣言すれば、政令を出し、基本的人権を制限できる

 熊本地震が発生した翌日の4月15日。菅義偉官房長官は記者会見で、緊急時の政府の権限拡大を憲法に定める「緊急事態条項」創設の必要性についてこう強調した。 「今回のような大規模災害が発生したような緊急時において、国民の安全を守るために国家や国民自らがどのような役割を果たすべきかを、憲法にどのように位置づけていくかは極めて重く大切な課題であると思っています。具体的には、国民的な議論と理解の深まりの中でおのずと決まっていくだろうと思います」

熊本地震発生の翌日、被災者救出の真っ最中に菅義偉官房長官は「(緊急事態条項創設は)極めて重く大切な課題」と会見で強調した

 自民党は、野党時代の2012年にまとめた憲法改正草案に緊急事態条項を盛り込んでいる。首相が「緊急事態」を宣言すれば、法律と同じ効果を持つ政令を出すことや、基本的人権を制限することができるなどとする内容だ。  安倍晋三首相も、昨年11月の衆院予算委員会で「草案のどこから始めるべきか。緊急事態条項からやるべきだという議論もかなり有力だ」と意気込んでいた。  菅長官の発言から4日後の4月19日、憲法学者の樋口陽一東大名誉教授ら「立憲政治を取り戻す国民運動委員会」が記者会見を開いた。  そこで、「熊本地震を奇貨として憲法に緊急事態条項を導入しようとする意図を示したが、それは、冷静な議論を省略する惨事便乗型全体主義で、許されることではない」という声明文を発表した。
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緊急事態条項には、「災害」だけでなく「戦争」も含まれる
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