翁長知事、市長選4連敗で辺野古埋め立て阻止に打つ手なし?
沖縄が一足早く暑い季節を迎えている。4月下旬には翁長雄志県政の今後を占う2つの大きな“事件”が立て続けに起こった。
1つは4月23日に投開票が行われた沖縄本島中部のうるま市長選挙。もう1つは北部の名護市辺野古での埋め立て工事の着工だ。うるま市は、人口12万人あまりで沖縄では3番目に多い。市長選挙では、現職の島袋敏夫氏と前の県議の山内末子氏が争った。島袋氏を自民・公明が推薦したのに対し、山内氏を社民、共産、社大、自由、民進が推薦。翁長知事も投票日前の3日間、連日うるま市内に入り、街頭で山内氏の応援演説をした。
一時は大接戦との観測が広がっていた。それを物語る世論調査の数字が飛び交い、投票日の2日前に話を聞いた自民党県連幹部は「負けたら大変なことになる」とぼやいていた。危機感を持った菅義偉官房長官が、現職の島袋氏を支持する市議会議員一人ひとりに電話をして「よろしく頼む」とハッパをかけたほど。無党派層の取り込みのため、終盤には小泉進次郎衆議院議員も応援に投入した。
だが、ふたを開けてみると、5753票の大差で島袋氏が勝利。翁長知事を支える革新各党の「オール沖縄」はこれで、今年に入り1月の宮古島市長選、2月の浦添市長選と、県内の市長選挙で3連敗ということになる。さらにいえば、昨年の宜野湾市長選でも敗北しており、2014年12月に翁長氏が知事に就任して以来、県内の市長選挙ではすべて惨敗しているのだ。
そもそも翁長氏のカリスマ性の源泉は、選挙に強いとされてきたこと。その翁長氏が応援しても勝てないとなると、影響力に翳りが出てくることは避けられない。
投票日翌日に、県庁に登庁してきた翁長知事に、マスコミ各社の記者らはコメントをもらおうと試みたが、返ってきたのは「一市長選の結果にコメントはしません」とのものだったという。3日間も応援に入っておきながら、「一市長選」はないだろう。翁長知事の苛立ちぶりがかえってうかがえる。
かたや菅官房長官は、同じく投票日翌日の会見で「(県内の)11市のうち9つが翁長県政に否定的で、『オール沖縄』という言い方が現実とまったく違っている」と述べた。
地元紙『沖縄タイムス』は、4月24日付の社説で、<敗北続きの翁長氏は剣が峰に立たされている。(中略)「オール沖縄」勢力は辺野古と直接関係のない選挙で、その壁を打ち破れない。民意を確認する県民投票の是非でも意見が割れており、辺野古ノーの取り組みは再構築を迫られている>と危機感を露にした。
うるま市長選投票日の2日後にあたる4月25日には、辺野古の埋め立て工事が着工された。この日行われたのは、埋め立て部分を取り囲む護岸工事の第一歩となる砕石の投下。大浦湾に面した砂浜から砕石を入れた袋をクレーンで釣り上げ、海中に投下する。この日はそれを5回繰り返しただけだった。
現地には移設反対派が集まり、作業が行われている米軍キャンプ・シュワブのゲート前で抗議活動を行ったり、カヌーで作業現場に接近を試みたりしたが、現地で取材した地元紙の記者によると、集まったのは100人程度だったという。県警幹部も、「最近はこちらが拍子抜けするほど抗議活動への参加者が目に見えて減ってきている。日によっては、警備にあたる機動隊員のほうが多いくらい」という。
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