更新日:2022年10月20日 23:18
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ザリガニを捕まえて食べたら、意外とインスタ映えした

『捕まえて、食べる』なる本が局所的に話題になっているのをご存知か? 著者はフリーライターの玉置標本さん。趣味は釣りを中心とした食物採取全般で、ネットに「捕まえて、食べる」様子を公開して人気を博している。本書には、カニやホタルイカ、エイやアナジャコなど数々の“捕食”の記録が綴られており、少年時代に生き物を追いかけた全男子は心を掴まれるに違いない。

玉置標本著『捕まえて、食べる』(新潮社)。少年心をくすぐるワクワクが詰まった一冊だ。

 私も本を読みながらワクワクしたその一人だ。千葉の山奥という土地柄もあるだろうが、小学生の頃のおやつはイナゴやナガラミが多かった。そして中でも一番記憶に残っているのがザリガニだ。近所の用水路で捕まえてきたザリガニを、父が七輪で焼いてくれた。飼うつもりが、まさか食べることになるとは思わなかった。味付けは塩を振りかけるのみのシンプルなものだったと記憶している。「ロブスターよりうまいだろ」と父は誇らしげだった。「うまいうまい」と食べた。食べたことがないロブスターと比べることはできなかったが、本当にうまかった。『捕まえて、食べる』を読んで、昔を思い出し、ザリガニを食べたくなった私は玉置さんにコンタクトを取った。 「ちょうどザリガニパーティを開く予定があるんですけど、ご一緒しませんか?」  「ザリガニを捕まえて、食べたい」という記者の不躾なお願いにもかかわらず、玉置さんは快諾してくれた。北欧諸国、例えばスウェーデンやフィンランドにはザリガニを食べる習慣があり、夏になるとザリガニを食べながらお酒を飲む行事、ザリガニパーティがいたるところで開かれるのだそう。玉置さんはそれを東京の山奥で行うというのだ。

食物採取が趣味のライター・玉置標本さん。

ザリガニを探して捕まえる

 都心から電車で1時間強のとある駅に集合し、車でさらに奥地へと向かう。ザリガニのためにわざわざレンタカーを借りて、アユが釣れるような場所でわざわざザリガニを捕まえるのだ。失敗は許されない。緑がこれでもかと生い茂り、川も底が透けて見えるほどの自然に身を置くと一気に童心に返る。アユも釣れるちゃんとした装備でザリガニを狙う玉置さんをよそに、私は思わずズボンを脱ぎ捨てた。少年時代と同じ短パン(トランクスだけど)と虫取り網スタイルで臨む。「捕まえる」手前での高揚感も、醍醐味のひとつだろう。

釣る気マンマンの玉置(左)さんと掬う気マンマンの記者。

 しかし最初のポイントでは、カメは見つかれどザリガニの気配は感じられず、さらに雨もしとしと降り出して意気消沈。小一時間で移動するはめになった。すると次のスポットには「釣る」までもなく、用水路に「見える」状態でザリガニが待ち構えていた。釣り具も網もいらない。「イノシシ注意」の看板をものともせず、時が経つのも忘れ、夢中で獲って獲って獲りまくった。我々はザリガニの鬼だった。

鬼と化した2人に「道具」はいらなかった。

 ザリガニを捕まえるコツは、「特にない」。だが玉置さんは言う。 「事前に情報を集めるのは大事なんですが、調べすぎないほうがいい。ザリガニはどこに行けば必ずいるとか。ネットにはいくらでも情報が落ちていて、それを読めば簡単に見つかりますけど、テンションは上がるどころかむしろ下がるでしょう。冒険はヒントだけあればいい。答えを知らないほうが楽しめますよ」  ドラクエでいえば、攻略本を読んでからではなく、小さなメダルがありそうな人んちのタンスを勝手に開けるように、ザリガニも直感を頼りに気ままに探して捕まえたほうが喜びもひとしお。冒険って、そういうことなのだ。

アメリカザリガニ、通称マッカチン。

約2時間でこの収穫。

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ザリガニを調理して食べる
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