給付金の不正受給、転売ヤーetc. コロナで一儲けする新型“アングラビジネス”
これまでの生活や常識を一変させた新型コロナウイルスは、思わぬところにも影響を及ぼしている。とりわけ脱法、あるいは違法な手段でカネを稼ぐアングラビジネスに与えたインパクトは大きい。その最前線に迫る。
4月7日に出された緊急事態宣言も全都道府県で解除され、今後は「第2波」との戦いに焦点が移るが、懸念されるのは経済への打撃だ。
国や各自治体からは、コロナショックが直撃した事業者や生活者に向けた支援策が次々と打ち出されている。しかし、そうした施策は皮肉にも、悪徳業者に甘い汁を吸わせる格好の的となってしまうかもしれない。巷では、給付金を食い物にする悪徳ビジネスが雨後の筍のように出現しているのだ。
都内で飲食店を家族経営する女性が明かす。
「ゴールデンウィークが明けた頃から『デリバリー用の販促物を作りませんか?』という営業電話がかかってくるようになりました。それも複数社からです。それぞれ違う業者なのに、口を揃えて『キックバックします』という。
どうやら東京都の業態転換支援事業というのがあって、デリバリーやテイクアウトのための販促費の5分の4、上限100万円まで助成金が出るという。
ある業者はウェブ用のメニュー制作を70万円でやらせてくださいと言ってきた。カラクリは『領収書は125万円で発行する。それで助成金を申し込めば100万円が出る。無料でメニューができるうえ、30万円が手に入りますよ!』というもの。
こうした営業電話は毎日のようにかかってくると同業者も言ってます」
2兆3000億円という、前例のない巨額予算がついた持続化給付金事業を“ネタ”にする悪徳業者もいる。詐欺事情に詳しいフリーライターの奥窪優木氏は話す。
「怪しい金儲けの情報が集まるSNSのクローズドなコミュニティには、『持続化給付金申請代理。会社員でも無職でも、もらえます』と謳う怪しい投稿がいくつもあります。本来、事業収入のない会社員は対象外なのですが、ペーパーカンパニーから昨年『調査委託費』などの名目で、100万円の支払いをしていたように見せかけて事業収益があったことにし、不正申請を代行するのです。
この場合、会社員は100万円を昨年分の売り上げとして計上し、確定申告する。そして今年、事業収入がゼロであれば、持続化給付金の満額100万円をもらえるという仕組みです。役所もすべて細かくチェックはできないから、ほとんどが通ってしまう。血税が本来困った人に渡っていないのは問題です」
こうした違法な給付金詐取指南の多くは、10~30%の手数料を取ることで収益を得ている。一部の転売ヤーや仮想通貨のICO(株式でいう未公開株の公開のような制度)で儲けたグレーゾーンの住人が手を染めているケースが多いというが、中には「手数料無料」というものまである。
「一時の仮想通貨ブームも収束し、ICOにかこつけたポンジスキーム(タコ足配当)は完全に下火になっていたんですが、コロナ以降に盛り返しつつある。彼らは『元手タダで投資できる』と吹聴して、資金を集めているんですが、実際は前述と同様の手口で『持続化給付金を無料で申請代行するので、その100万円を我々に2か月預けろ』というもの。
『配当は月10%』などと謳っているようですが、元金は戻ってはこないでしょう。ただ、自分も不正受給に手を染めているという後ろめたさから、被害届が出されることもない。巧妙な手口です。あるグループの関係者は『今は完全なボーナスステージ』と高笑いしていました」
そしてもう一つ、裏社会で活況を呈しているのが、ペーパーカンパニーの売買だという。
「コロナ前に登記された法人であれば、最大6000万円まで無担保で融資される政策金融公庫の特別貸付などの対象になるため、需要がある。通常、登記したての法人は融資など受けられませんから。中には融資を受けてから計画倒産する目的で購入するケースもあるようです。
取引価格はこれまでの売り上げがどの程度あったかによって変わりますが、過去3期ほどコンスタントに1000万円程度の売り上げがあって、持続化給付金受給済みの法人だと、100万円前後で売買されている。こうした詐欺的な行為が今、横行しています」
持続化給付金事業を経産省から委託された「一般社団法人サービスデザイン推進協議会」は、実体のない幽霊法人だったことが週刊文春によって報じられたが、各種経済支援策に群がる不良どものペーパーカンパニー利用は、それよりは巧妙なようだ。
新型“アングラビジネス”界隈の手口
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