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乗降客がほぼゼロ…宗谷本線の廃止12駅。駅舎にある「クマ出没注意!」に恐怖

―[シリーズ・駅]―
 北海道の旭川~稚内を結ぶ日本最北の鉄道路線として知られる宗谷本線。沿線には53か所の駅があるが、3月13日で全体のおよそ2割を占める12駅が廃止となる。鉄道ファンの中には最後に見納めに行きたかった人も多いと思うが、コロナ禍で断念せざるを得なかった人もいるだろう。  そこで、これまで数多くの宗谷本線乗車歴を持つ道産子ライターの筆者が廃止各駅を訪れたときの様子をレポート。今回の後編では廃止12駅の中でも沿線の北側にある6駅を紹介する。

南美深駅

南美深駅

南美深駅

 名寄市との境界線から300メートルほどの場所にある南美深駅(北海道美深町)。北隣で特急停車駅の美深駅、南に3駅離れた同じく今回廃止予定の北星駅の距離は合わせて9キロ。区間内には5つ駅がひしめき、旭川市内を除けば宗谷本線でもっとも駅が密集しているエリアだ。 南美深駅 駅の周囲は大雪原となっているが、雪のない季節には見渡す限りの田畑が広がる。線路部分は周辺よりも小高くなっているため、撮影スポットとしてはうってつけ。実際、撮り鉄の間では人気らしい。
南美深待合所

南美深待合所

 ホーム脇の建物には駅名ではなく「南美深待合所」の文字。名前だけ聞くと、田舎にありがちな待合スペース付きのバスの停留所っぽくも見える。待合室にはイスだけでなく、ほかの廃止予定駅にはなかった机が完備。乗降客は1日平均0.4人(※2015~2019年)で完全に無用の長物となっているが、勉強やパソコン作業をしたい人には便利だ。 南美深待合所 筆者も以前訪問した際、ちょうど急ぎの原稿を抱えていたこともあり、次の列車までの時間を利用して仕事をしながら待っていた。地方の無人駅だと待合室にテーブルなどが置いてある駅は非常に少ない。そういう意味でも重宝した個人的にも思い入れのある駅だ。

紋穂内駅(もんぽない)

紋穂内駅

紋穂内駅

 南美深駅から3駅先にある紋穂内駅は、「小さい野にある川」という意味を持つアイヌ語の地名が由来の駅。開業時期は廃止12駅の中ではダントツに古い1911年で、110年という長い歴史を持つ。  もともと貨物列車も発着する貨物取扱駅だったが、ホームは国鉄時代に2面から1面に縮小。駅舎もJR民営化の前に取り壊され、その代わりとして用意されたのが貨物車用の車掌車だった。 紋穂内駅 以来、待合室として利用されていたが、外壁の塗装はボロボロに剥げてまるでモザイク画のような状態。ホームや駅前の除雪はされていたが、待合室内はほかの駅ほど手入れが行き届いておらず、部屋の隅や窓のサッシなどには虫の死骸も数多く残っていた。 紋穂内駅 壁には落書きが複数あり、そこにも「虫が多すぎる」「虫がいっぱいです」など書き込みが。さすがに冬場は大丈夫だったが、確かに夏場は虫がブンブン飛び回っており、待合室も居心地がいいとは決していえなかった。  駅周辺も草木が生い茂るだけで何もないため、駅施設が撤去されたら自然に還るのも早そうだ。
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1日の利用者数、平均0.0人の駅
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フリーライター。鉄道や飛行機をはじめ、旅モノ全般に広く精通。3度の世界一周経験を持ち、これまで訪問した国は50か国以上。現在は東京と北海道で二拠点生活を送る。

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