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選挙も笑いのネタに。アメリカ流“政治コメディショー”がバカ受けした一部始終

―[取材は愛]―

参院選の真っ最中に、選挙をネタにしたお笑いショー

東京・渋谷のライブハウスで行われた選挙コメディショー

東京・渋谷のライブハウスで行われた政治コメディショー

 政治ネタを笑うってどういうことだろう? そんなことを考えさせてくれる2人のコメディアンのショーが、参院選のさなか、全国ツアーを敢行している。  せやろがいおじさん。沖縄の真っ青な海を背景に真っ赤なふんどし姿で時事ネタに切り込む。彼がタッグを組んだのがSaku Yanagawaだ。マイク一本で社会に切り込みジョークで笑わせるスタンダップコメディの第一人者。アメリカ・シカゴを拠点に年400回のステージを重ね、Forbes誌の「30 UNDER 30」(世界を変える30歳未満の30人)に去年、アジア代表として選ばれた。
せやろがいおじさん

せやろがいおじさん

 2人の全国ツアーは7月1日、選挙戦真っただ中に東京・渋谷のライブハウスで口火を切った。冒頭せやろがいおじさんは「緊張するんですよね、都会の人たちの前で話をせないかんのは」と語りながら、今回は割とリラックスしているという。なぜなら……。 「参院選の情勢見てると、東京のお客さんと言っても、しょせん生稲晃子(自民の候補)が受かりそうなんでしょ」  NHKが行った候補者アンケートでほとんど無回答だったことから「投票する意味がわからない」とまで言われる候補が優勢なんて、都民も大したことない、とディスっている。お客はバカ受けだ。

自民党支持の人も、そうでない人も。意見の違う人が出会って、それを笑える場所に

Sakuさん

Sakuさん

 続いてステージに立ったSakuさん。 「選挙の前だから言いますけど、世の中に2種類、嫌いな人間がいるんすよ。人を、支持政党でジャッジする奴と…(ちょっと間をおいて)自民党に投票する奴」  爆笑と拍手が沸いた。ところがSakuさんは客席に冷や水を浴びせる。 「ここは拍手するとこやない。冗談で言ってるんやから。『そうだそうだ、自民党はダメだ!』なんて言ってたらただの集会やから」 「支持政党で判断する奴は嫌い」と言った直後に「自民党支持者は嫌い」と言う。その矛盾がネタなのに、単に「自民党が嫌い」という言葉に拍手するなら政治集会と同じじゃないか、と挑発した。そして続けた。 「スタンダップコメディの一番の魅力は、皆さんが自分と意見の違う人に出会って、それを笑える場所、ということなんです」 会場の様子 そうだよなあ、と観客が思わず納得した頃合いで、 「……いやなアメリカンジョークみたいでしょ。デーブ・スペクターが言いそうな」  ひねってひねって、意見の違い自体をネタにする。そんなステージが参院選投票日の7月10日は2人の出身地・奈良で行われる。 文・写真/相澤冬樹
無所属記者。1987年にNHKに入局、大阪放送局の記者として森友報道に関するスクープを連発。2018年にNHKを退職。著書に『真実をつかむ 調べて聞いて書く技術』(角川新書)『メディアの闇 「安倍官邸 VS.NHK」森友取材全真相』(文春文庫)、共著書に『私は真実が知りたい 夫が遺書で告発「森友」改ざんはなぜ?』(文藝春秋)など
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