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値上がりはもうすぐ終わる?世界的な物価はピークからすでに低下中

 私は経済学者として国内外の大学で教鞭をとったりした後、’13~’18年には日本銀行副総裁として金融政策の立案にも携わりました。そこで、感じたのは「経済を知れば、生活はもっと豊かになる」ということ。そのお手伝いができればと思い、『週刊SPA!』で経済のカラクリをわかりやすく発信していきたいと考えました。

いつまで物価は上がり続けるの?

経済オンチの治し方

イラスト/岡田 丈

 物価が「日銀が目標とする2%」を超えて、長期間上がり続けることはありません。  日本の物価動向を示す消費者物価指数は昨年12月に前年同月比で4%も上昇しました。20%以上も上昇した電気・ガス代の影響に加えて、牛乳(9.9%)などの食料関係の値上がりが影響したかたちです。  これらはウクライナ侵略に伴う経済制裁でロシア産原油・天然ガス供給が減少し、食料関係の生産コストが上昇したことに起因しています。  しかし、高騰したエネルギー価格は、昨年中旬にピークに達し、天然ガスはピークから72%も下落しています。世界的な食料価格もピークからすでに15%低下しています。

インフレを抑制する有効な手立ては?

 では、足元のインフレを抑制する有効な手立てはなんでしょうか? 最も効くのは、日本以外の多くの国の中央銀行が採用している政策金利の引き上げです。  政策金利とは、民間銀行同士が資金を貸し借りしている市場の金利(コール・レートといいます)のことです。民間銀行はこのコール・レートが上がると、資金を企業に貸すよりもコール市場で運用するほうが有利になります。  企業や家計の借入需要に対して、貸出が減れば、設備投資や住宅ローンなどの借入金利は上がります。すると、投資や消費が減少し、価格上昇率は低下し、企業の生産活動も減退します。生産に必要な雇用が減少し、賃金上昇率が低下するため、さらなる消費の減少を通じ、消費者物価上昇率(インフレ率)が低下していくのです。  世界の多くの中央銀行が一斉に政策金利を引き上げれば、このような経路をたどって、世界景気は悪化します。
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インフレ率は今後低下する見込み
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東京大学大学院経済研究科博士課程退学。上智大学名誉教授、オーストラリア国立大学客員研究員などを経て、’13年に日本銀行副総裁に就任。’18年3月まで務め、日本のデフレ脱却に取り組んだ経済学の第一人者。経済の入門書や『「日本型格差社会」からの脱却』(光文社)、『自由な社会をつくる経済学』(読書人)など著書多数

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