日本のケータイ料金はむしろ安い!? 「ケータイ料金値下げ会議」の5大誤解
安倍首相の鶴の一声を受けて招集された有識者会議は、通信業界を混乱に陥れかねない“地雷”だらけだった……! 安くなるのは歓迎すべきことのはずなのに手放しで喜べない“事情”とは……
事の発端は、「家計に占めるケータイ料金の割合が増えている」という、経済財政諮問会議での安倍首相の一言。これを受けて招集されたのが、「ケータイ料金の値下げ策を検討する有識者会議」だ。
ケータイ料金が下がること自体は歓迎すべきことのはずだが、メディアの反応はいたって冷ややか。「どうせ安保問題から国民の目をそらすための釣り餌だろ」という見方もさることながら、同会議を主宰する総務省が、これまでにもさんざん通信業界に要らぬ口を出しては混乱を招いてきたからだ。
「代表的なのは、’08年に無理やり“販売奨励金”を廃止させたこと。これによって翌年の携帯電話の売り上げは激減し、官製大不況と揶揄されました」と話すのは、モバイル評論家の法林岳之氏。今回もまた、よからぬ影響が?
「懸念されるのは、値下げによって寡占状態になること。消耗戦をやってライバルが皆いなくなったところで、じゃあまた値上げします……ということにもなりかねない。それを避けるには“対抗軸”が必ず必要で、値下げを考えるなら、まずは各社に競争させるよう持っていかなくてはならないのに、競争政策についてはノープランなのが総務省なんですよ」
かつて、“第4のキャリア”であったイー・モバイルを、あっさりソフトバンクに買収させてしまったのもその表れ。ソフトバンクの目的が、イー・モバイルが所有する周波数帯の取得にあったことは明らかで、競争政策を重視するなら「買収は認めても、せめて周波数帯域は返却させるなりすべきだった」との見方が強い。
そもそも「家計に占めるケータイ料金の割合が増えている」という前提にも、多くの誤解が含まれている……と法林氏は言う。
「通話料金自体は、5年前と比較しても激減しています。例えば、ドコモの接続料(他社からドコモにかけたときの通話料金)は6割減っていますし、パケット通信料の単価は10分の1程度に。家計に占める割合が増えているといっても、単に“キャリアへの支払いが増えている”だけで、昨今ではその中にさまざまなコンテンツサービス料が含まれていることも多く、通話料金のみをターゲットにするのは筋違いと言えます」
かつて総務省に廃止された販売奨励金は、その後「月額割引」(月々サポート」など)という形で復活したが、それが、今回の有識者会議で再び目の敵にされていることにも、法林氏は疑問を呈する。
「端末を安くするための“原資”があるんなら、通話料金を安くするほうに回すべき……というのが高市総務大臣の言い分。ですが、キャリアが割引をつけてユーザーに新たな端末を買ってもらおうとするのは、なにも端末で儲けようとしているからではない。ネットワークやサービスを新しいものにリプレイスして、より良いものに進化させていくには、新しい端末の普及が欠かせません。通信と端末は両輪で回っているものなのに、それを無理やり切り離そうとするのは間違っていますよ」
(1)日本のケータイ料金は高い
⇒ネットワークのクオリティを考えると、むしろ安いくらい。
(2)家計に占めるケータイ料金の割合が増えている
⇒通話料金自体は下がっている。
(3)3大キャリアの料金が全部同じというのはおかしい
⇒競争の結果、現在の料金に落ち着いただけ。
(4)あまり使わない人にとって、料金プランの選択肢がない
⇒MVNOの存在をお忘れでは?
(5)販売奨励金のせいで、あまり機種変更しない人が損してる
⇒販売奨励金制度が、日本のケータイの進化を牽引してきた。
取材・文/SPA!編集部 写真/アフロ・読売新聞、時事通信
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