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満月の下、裸足でインド聖山を巡礼した――小橋賢児「小さい奇跡が重なり合い。大きな奇跡を産む」

2015年の夏、日本中でもっとも熱かったダンスミュージックフェスティバル「ULTRA JAPAN」は、一人の男の熱狂から始まった。周囲の反対を押し切って開催したイベントは成功し、巷間に伝導したころ、その男はバックパック一つでひっそりと旅立つ。 小橋賢児【僕が旅に出る理由 第11回】 長いようで早いインド3ヶ月の旅もいよいよ残り約3週間というところまできていた。 行く当てもなく、毎度その地に出向いては滞在日数を決め、次の行き先を決めるという完全に感覚頼りの行き当たりばったりな旅だったので、この時点でも残り3週間の具体的なプランは何も決まってはいなかった。 ハウスボートの後はせっかくなのでインド最南端まで行ってみた。到着してすぐに美しい夕陽を拝むことができ、翌朝の朝焼けの中祈りを捧げる巡礼者の姿は神々しくも思えた。 しかしここは1泊で十分という感じもしたのですぐさま別の場所へと移動し、次の地に到着しては自分がワクワクするか心のセンサーを確認し、そこまででもなければ、少しだけ見てまわってはすぐに次の地のバスに乗るような完全に感覚頼りで少し駆け足な感じで動きまわった。相変わらず予想だにしないハプニングは日常茶飯事でシングルと頼んだはずの寝台バスなのに隣に見知らぬインド人が乗り込んできたり、ひと時も気を許せる事のないインドでの日々もこの頃にはすっかり楽しめるようにもなっていた。 そんな中、ガイドブックにも載ってなく日本では無名に近いティルバンナマライという小さな街へ辿りついた。いつだったか忘れたがネットサーフィンで気になってブックマークしていたのと、これまた奇遇にもこの街に近づいた時に友人から勧められたのだ。 それでもあまりにも情報がないので当初は1泊でその地を離れるつもりで立ち寄った。バスがその地に到着したのは朝の3時半、偶然にもその日は満月だったようで意外と街は明るく街灯はなくとも歩く分には問題ない感じであった。 街の中心にはアルナーチャラという山がそびえ立ち、その山の周りを裸足で歩いている行者が沢山いる。 ⇒【画像】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=1083934 巡礼以前ネットで見た時にアルナーチャラ山の周囲を14km歩くという事は知っていたが、まさかこんなに夜中に歩いている人がいると思わなかった。しかも、数百どころか数千はいるだろうかという人数で、その異様な光景に思わず混じりたいという衝動がおきてしまった。 すぐに宿を見つけてチェックインしようと思ったが、この巡礼者が大量に押し寄せていたせいで空いている宿がなかなか見つからない。そんな時はリキシャの運転手に少し高めのチップを渡して、とにかく近場の宿を回ってもらうしかなかった。30分くらいあたりまくっただろうか、ようやく宿をみつけチェックインしてすぐにその行者の流れにのることにした。 奇遇にもちょうどこの日は満月の日でこの日にアルナーチャラ山の周りを歩く事をギリプラダクシナというらしく信仰者にとって大事な聖山の巡礼の日だったそうだ。 こんなタイミングに当たることなんてなかなかないだろうしせっかくのなので僕も裸足で14kmの巡礼を歩く事にしてみた。 裸足しかしながら満月で照らされた道路は時に見たくないものまで写しだす。ゴミ、食べカス、飲みカス、牛のフンなど… 月で照らされているといえ、夜が明ける前にそれらを完全によけきる事は難しく、裸足なのでどうしてもたまに嫌な感覚に触れてしまう…それでも多くの行者が歩いている中、いちいち立ち止まって気にしている訳にもいかないのでただひたすら前へ進むしかない。
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時にヌメっとする嫌な感触…
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