「米のとぎ汁が放射能に効く」は健康を損なう恐れあり
― [放射能に効く民間療法]の大爆笑(1) ―
「放射能」の恐怖に怯える人は少なくない。子供を抱える親ならば無理からぬことだ。そんな不安を背景に、「放射能排出」を謳う民間療法が跋扈している。果たしてその内容は……?
~ 「放射能排出」のフレーズが民間療法業界で大ブームに!? ~
黒毛和牛から規制値を遥かに上回る放射性セシウムが検出されるなど、まだまだ収束の気配が見えない放射能汚染問題。そんななか、「放射能に効き目アリ!」を謳う民間療法が続々と登場している。その大半が、梅干しや根昆布汁などの食品、さらには発酵させた米のとぎ汁などを摂取することで、体内に入った放射性物質が除去できるという、本当ならば夢のようなもの。そして、これらはツイッターやブログなどを通じて日々、拡散中だ。本当に効き目があるのなら素晴らしい話だが、これがどうも胡散臭い。これらの民間療法を、専門家はどう見ているのだろうか。
◆放射能排出どころか逆に危険なものも!
「放射能に効果がある? そんなものがあるなら3・11以前から評判になっているし、医療の現場で使われていますよ。対放射能の民間療法のほとんどは、インチキとまでは言わないまでも、疑問符が付くものばかりです」
似非科学に批判的なブログで知られる内科医のNATROM氏は、こう憤る。大阪大学准教授で科学技術社会論が専門の平川秀幸氏も同様だ。
「残念ながら、現時点で“放射能に効き目アリ”と証明されている薬や食品はありません。ただ、こうした民間療法が続々と出てくることは予想できました。その多くが以前から似非科学の観点で批判されていたものばかりですから」
いきなり結論が出たが、やはり甘い話はないのである。それどころか、医師や科学者の視点からすると、かえって健康を損なうというんだから本末転倒だ。
「米のとぎ汁を数日間寝かせて発酵させ、乳酸菌が繁殖したら噴霧して吸引という療法が拡散しています。医師の立場からすると、これは極めて危険。一般人がマネをすれば、乳酸菌だけでなく雑菌が培養されることもあるでしょう。ましてや吸引などしたら感染症などの健康被害にも繋がりかねない。絶対にやってはいけません。これはもはや、乳酸菌が放射能に効くかどうか以前の問題です」(NATROM氏)
また、長崎で被爆した医師・秋月辰一郎氏(故人)の著書を引いて、水分を控えて塩を多めにとるべき”という主張もあるが……。
「これの何が放射能に効果的なのか理解できませんが、この暑さの中で水分を控えるのは自殺行為。脱水症状を起こします。また、塩分摂取も量が多ければ問題です。塩分摂取量は、一日あたり男性で10g、女性で8gが基準。それ以上の塩分の摂り過ぎは健康を損なうので避けるべきです。これも、放射能以前の話」(同)
そりゃそうだよな……。
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