空き部屋レンタルサービス「Airbnb」に違法性の恐れ。そのリスクとは?
「Airbnb(エアビーアンドビー)」といえば、自宅の空き室を短期で貸したい人と旅行者や観光客を仲介する人気のウェブサービス。’08年の設立以来、急成長を遂げた同社は、世界最大の多国籍ホテルグループ「インター・コンチネンタル・ホテルズ」をしのぐ企業評価額1兆円超とも言われている。
しかし近年、そのサービスが違法ではないかという議論が各国で起きている。一体、どこが問題なのか? 一般民事から企業法務まで幅広く手掛ける弁護士・櫻町直樹氏に話を伺った。
――どの点が違法とみなされているのでしょうか?
少し前のことですが、軽井沢の別荘をオンラインで予約できるサービス「Yahoo!トラベル 軽井沢の別荘特集」が開始1か月で休止になる出来事がありました。個人が所有する別荘を有料で短期間提供するという内容に、長野県の保健所から「旅館業法上の問題があるのではないか」と指摘があったことが理由とされています。
Airbnbも「短期間、有料で提供する」という点で同様と言えます。旅館業法は「「宿泊」とは、寝具を使用して前各項の施設を利用することをいう。」(同法2条6項)と規定しています。宿泊希望者に短期間有料で家(や部屋)を提供することは、旅館業法にいう「ホテル営業」や「旅館営業」などにあたる可能性があり、適用される場合は、都道府県知事等の許可が必要で、客室の数・床面積、共同便所の便器の数などについての細かい基準を満たさなくてはなりません。
――この場合、誰が罰せられるのでしょうか?
基本的には、貸主が旅館業法違反に問われることになると思います。無許可で営業した場合は、6か月以下の懲役か、3万円以下の罰金と規定されています。一方、借りるほうが刑事責任を問われることはないだろうと思います。例えば、使用が禁止されている添加物入りの食品を買った消費者が、食品衛生法違反で罰せられるかというと、そんなことはないですよね(笑)。
――今後、罪になるケースも出てくるのでしょうか?
個人がごく小規模に行なっているという場合には、行政もそれほど厳しくはチェックしないだろうと思います。ただ、利益追求のため企業化・組織化して大規模に行ったような場合には、行政も見過ごすことはできず、本腰を入れてチェックしてくるのではないでしょうか。
――今後、法律はどうなっていきますかね?
Airbnbのメリットが広く認知されてくれば、法律も変わってくるかもしれません。
実際、安倍政権が進める国家戦略特区における事業として、外国人旅行者が宿泊するケースを対象に、国家戦略特区内で一定の要件を満たすものとして都道府県知事の認定を受けたときは旅館業法を適用しない、という方向で規制を緩和する動きもあります。
ただ、法律上の問題がクリアされても、例えば、貸し出した部屋がめちゃくちゃに荒らされたとか、売春に利用されたとか、その手の話が海外ではあるようです。もし本気でAirbnbのビジネスがしたいなら、そうしたリスクをきちんと受け止める必要がありますね。
IT企業が成長していく過程で、各国の法律や文化と合わず軋轢を生むのはよくある話だ。こうした議論も、Airbnbが世界に展開していくなかで必然だといえるのかもしれない……。
<取材・文/小平ジョージ 取材協力/パロス法律事務所>
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