「イスラム国」に渡るのは自己責任か? 佐藤優の導き出した答え

ジャーナリスト・後藤健二さんが殺害されて1か月以上、いまだ「イスラム国」(IS)の凶行がシリア、イラクの各地で続いている。にもかかわらず、ISに同調しようという若者たち……。2月にはイギリスから、15~16歳の少女3人がSNS上で勧誘され、シリアに渡ったことが確認され、3月9日にはオーストラリアの空港でISに合流しようとしていた10代の兄弟の出国を当局が阻止していたことが明らかになった。そんな中、3月に『人生の極意』(扶桑社刊)を上梓した知の巨人・佐藤優氏に、SPA!読者から素朴な疑問が寄せられた。「ISに合流して、殺されても自己責任なのではないか?」と……。「物見遊山でISに渡る人と、後藤健二さんを一緒にしてはいけない」。珍しく強めの口調で諭した佐藤氏の主張を紹介したい。

「イスラム国」に渡るのは自己責任か? 佐藤優の導き出した答え

ISの広報誌「DABIQ」より

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☆相談者☆ 匿名希望 会社員 57歳 男性

ISに捕えられた2人。確かにISの暴虐非道ぶりは厳しく批判されてしかるべきですが、この2人の責任も大きいと思います。ISには道理も情も通じません。だから危険だから行ってはいけないと言われているのに行ってしまう。そのあげく、日本のみならず、ヨルダンなどにも迷惑をかけてしまっています。国益をも損なっていると思います。本人の自己責任と思いますが、佐藤さんはどう思いますか?

◆佐藤優の回答

過激組織 ISが支配する領域に渡航する日本人について論ずる場合、分類が不可欠になります。評価もこの分類に応じてなされるべきと思います。

第1は、ISの理念に共鳴し、ジハード(聖戦)に参加するために渡航する人たちです。こういう人たちは、既存の国際秩序を破壊し、殺人に関与する恐れがあります。こういう人たちが日本の国益、日本人の名誉と尊厳を毀損することは間違いないです。法規を厳格に適用して、日本人がテロ活動の加害者にならないようにするための措置を政府は取らなくてはなりません。

第2は、「自分探し」の旅や物見遊山でISのような危険な地域を訪れる人です。1億2000万人以上の日本人がいるのですから、その中から数人、変わった人が出ることは仕方ないです。しかし、1番目のようなテロ行為に参加することを意図している人々とは分けて考えるべきです。

第3は、ジャーナリストとしてISで起きている現状を報道する目的で、当該地域を訪れる人々です。ISの現状についてロレッタ・ナポリオーニはこう述べています。<二〇一四年夏、ローマ法王フランシスコは、各地で勃発した紛争の有毒な瘴気が世界に拡がっているとして、第三次世界大戦はすでに始まっていると述べた。この戦いは、二〇世紀に起きた二つの世界大戦とは似ても似つかない。むしろ近代以前の戦争、主権国家ではなく地方軍閥、テロリスト、民兵、傭兵による戦いを想起させる。彼らの究極の目的は、領土を征服し、住民や天然資源を搾取することであって、国民国家の建設はめざしていない。/こうした戦いには、塹壕もなければ、戦場すらない。兵士の行動をある制度まで規制する国際交戦規定も適用されない。ジュネーブ条約(戦時における傷病者と捕虜に関する国際条約)はゴミ箱に投げ給てられた。さまざまな紛争の当事者は、みな宗教的暴力、理不尽な破壊、ジェノサイドなどの戦争犯罪を犯している。>(ロレッタ・ナポリオーニ(村井章子訳)『イスラム国 テロリストが国家をつくる時』文藝春秋/158頁)。こういうISの事情を日本国民に伝えることにはとても大きな意味があります。

大前提として、非武装の市民を意図的に殺害することは、絶対に許されないというのは、国際社会の大原則です。あなたのように自己責任論で、死者の責任を追及することは、ISの非人道的行為を免罪することにつながります。また、殺害された湯川遥菜さんは、どちらかと言うと第2に分類されると思います。これに対して、後藤健二さんは、キリスト教徒としての信念に基づき、誰もが無視をしている湯川さんを助け出さなくてはならないと真剣に考えるとともにISの実状を日本国民に伝えたいという意思を持っていました。命懸けで個人的並びに職業的良心に従って行動し、不幸なことに殺害された人を軽々に非難すべきではないと思います。

◆募集
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【佐藤優】
’60年生まれ。’85年に同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省入省。在英、在ロ大使館に勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍。’02年に背任容疑で逮捕。『国家の罠』『読書の技法』『日本国家の神髄』『人生の極意』など著書多数

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