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テリー伊藤の“アイデア発想法”「自分の中に眠っている魂を表に出すのが企画」

 今年3月に朝の情報番組『スッキリ!!』(日本テレビ系)を降板したテリー伊藤は、そのわずか3か月後に『白熱ライブ ビビット』(TBS系)と『チャージ730!』(テレビ東京系)で“掛け持ち”復帰を果たす。多忙を極める生活のなか、CSのMONDO TV『テリー伊藤のTOKYO潜入捜査』では、アンダーグラウンドな世界へと果敢に足を踏み入れる。そんな彼が、メディア論から部下の育て方、そしてアイデアの出し方までを一気に語り尽くす! テリー伊藤◆女性上位時代のテレビ  今後、メディアとしてのテレビはどう変わっていくのか? そう尋ねると、テリー伊藤は「鍵を握るのは女性」と断言した。 「これは車でも同じことが言えるんだけどさ。車を買うとき、昔はほとんどの場合は男が選んでいたけど、今は軽自動車なんかは女性が選ぶことがほとんどなわけよ。当然、そうなるとメーカー側も女性にウケそうな新商品を発表するしね。テレビの場合、イケメンが出演すると数字(視聴率)が上がりやすいっていうデータがある。女性のディレクターも増えるだろうな。男性向けの放送局ですら、女性に支持されない番組は数字を取れないと思うしね。  女性が観たくなる番組作りっていうのは、単純な話ではないんだ。たとえばナレーションひとつとっても、男性の声のほうが女性の声よりもいいっていうことではなくて、むしろ女性の声のほうが落ち着いて観ることができるかもしれない。そのへんは慎重に見極めなきゃダメなんだよね。でも考えてみたら、新しくできるシネコンにしても二子玉川の蔦屋家電にしても、全部が女性を意識しているよね。これはもうテレビがどうとか言う前に、時代の流れだよ」 ◆アイデアとオリジナリティ  テリー伊藤は、指導者としての評価も高い。門下生として巣立っていったそーたに、おちまさと、村上卓史、都築浩ら放送作家のほか、ソフト・オン・デマンド創業者の高橋がなりもテリーの部下として働いていた。その教育方法はスパルタ式で知られるが、特にアイデアの出し方について一家言あるようだ。 「今は誰にでもチャンスがある時代なんだよ。料理に詳しい人は料理番組を作ればいいし、スポーツに詳しい人はスポーツ番組を作ればいい。女性の下着について異常に詳しい男のテレビマンなら、今までになかった下着バラエティを作ることができるかもしれない。 テリー伊藤 部下を育てるっていう意味でいうと、たとえば『今から3時間以内に企画書を50本書け』って言うわけ。すると、まずタレント名に頼った企画を挙げてくる。そんなの、即ダメ出しだよね。企画とは呼べないから。  そうすると3時間経っても『できません』って言ってくるだろうから、さらに居残りで延長戦に突入させる。そうすると初めて、それまで自分が観てきたものとか、今テレビで流行っているものを真似するだけの企画じゃない‟何か”が出てくるんだ。実際、テレビの現場では『週刊SPA!』からネタを拾ってくることも多いんだよ。そんなことをするんじゃないって俺は言うんだけどね。情けねぇ話だよ。  真似ではない何かっていうのは、たとえば『実はうちの親父が年甲斐もなく浮気しているんですよ』とか、そういうところから発想をスタートさせるわけ。それに対して、今度は『お袋まで別の男といい感じになり始めて……』とかって続いていくと、俺は面白いって認めるだろうね。そいつしか知らないオリジナル性を入れてくる時点で、そいつしか書けない立派な企画になるわけだ。  自分の中に眠っている魂を表に出すのが企画だからさ。実はこれってテレビだけじゃなくて、あらゆるアイデア出しに通じることなんだけどね。企画書は本数を重ねると上手くなるからいっぱい書いたほうがいいし、そこには自分だけのオリジナリティを入れること。それは若い奴らにも伝えていこうと思っているね」 ※文中敬称略 <取材・文/小野田衛 撮影/我妻慶一 構成/北村篤裕> 【テリー伊藤】 1949年生まれ、東京都出身。演出家。テレビプロデューサー。日本大学経済学部を卒業後、テレビ番組制作会社・IVSテレビに入社。『天才たけしの元気が出るテレビ』(日本テレビ系列)『ねるとん紅鯨団』(フジテレビ系列)などヒット番組を手がける。その後独立し、『浅草橋ヤング洋品店』(テレビ東京系列)を総合演出、「サッポロ生搾り」「ユニクロ」など数々のCMも演出する。『サンデー・ジャポン』(TBSテレビ系列)など現在の出演番組多数。近著に『長嶋茂雄を思うと、涙が出てくるのはなぜだろう』(ポプラ新書)がある。
出版社勤務を経て、フリーのライター/編集者に。エンタメ誌、週刊誌、女性誌、各種Web媒体などで執筆をおこなう。芸能を中心に、貧困や社会問題などの取材も得意としている。著書に『韓流エンタメ日本侵攻戦略』(扶桑社新書)、『アイドルに捧げた青春 アップアップガールズ(仮)の真実』(竹書房)。
長嶋茂雄を思うと、涙が出てくるのはなぜだろう

日本人にとって“長嶋茂雄”とは何か?

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