若者に「写ルンです」がリバイバルブーム。そこには戦略PR「そもそも」の法則があった
ここのところ、いわゆる「リバイバルもの」が目立つ。その昔流行ったものが、なぜか急に復権する現象だ。最近だと、例えば幼い頃に親しんだお菓子。オトナ向けを狙った明治の「大人のたけのこの里」「大人のきのこの山」がその火付け役だと言われている。世界的にはアナログレコードもそうだろう。日本レコード協会によると、2015年のレコード生産数は前年比65%増加したという。青春時代を思い出すなつかしいものばかりで思わず遠い目になってしまうけれど、それもそのはず、音楽やファッション業界では、その周期はおよそ「20年」と言われている。
実はこの「周期」に、戦略PRの「6つの法則」のひとつ「そもそも」が関係してくる。どういうことか、最近のリバイバルブームを例に説明しよう。レンズ付きフィルムの「写ルンです」だ。
スマホやデジカメもなかった時代、旅行やデートに「写ルンです」は欠かせなかった。40代以降の世代なら、ドライブの途中にコンビニに立ち寄って購入したこともあるだろう。そんな「写ルンです」も今年で30周年。1986年に富士フィルムから発売され爆発的なヒットとなった。がしかし、その後はデジカメや携帯カメラにおされ、レンズ付きフィルムの出荷は1997年の8960万本をピークに、2012年には430万本まで落ち込んだ。
これが最近、若者を中心に人気が再燃している。理由はそのアナログなシンプルさと手軽さ。イマドキiPhoneでもじゅうぶん手軽に写真が撮れると思うのだが、若者の感性からするとスマホのデジタル写真は「キレイ過ぎる」ということらしい。アナログな温かみとか、フィルム特有の粗さとかが支持されているのだ(いまでもレコードにこだわるオヤジのようでちょっとホッとしたりもする)。もちろん現代的なのは、それがインスタグラムなどのSNSに投稿されシェアされて、ブームに拍車をかけているということだ。
これはある種、写真における「原点回帰」である。テクノロジーの進化は写真をデジタル化させ、画質を飛躍的に向上させ、撮影枚数の制限はなくなった。その申し子みたいなデジタルネイティブ世代が、「写ルンです」に魅了されている。大切な友達や恋人との思い出だから、ちょっと味のある雰囲気の写真を、24枚とか36枚とかの枚数を大事に使って撮る。そもそも「写真」がもっている素敵な原点だ。「リバイバル」は、キリスト教の「信仰の原点に立ち返ろうとする運動」を語源としている。20年や30年の周期で起こるリバイバルブームは、周期的にやってくる「原点回帰」そのものなのだ。
この原点回帰の視点が、戦略PRには必要だ。「あれ?そもそも写真って、キレイ過ぎるより味があるほうがいいよね」と誰かが気づく。そう思う人がジワジワと増えていく。ここで大事なことは、「みんながそう思っていること」は、案外に社会では表面化していないことがあるということ。あるいは、「そういう時期」があるということだ。世の中にじっと目を凝らしてみよう。ひょっとしたら、みんなが忘れている原点や普遍的な何かが潜んでいるかもしれない。本当に大切なことがおざなりにされて、表面的なトレンドや議論が横行しているかもしれない。それをPRチャンスに変える。「よくぞ言ってくれた!」を引き出す大きな価値転換を起こす。それが、戦略PRの「そもそも」の法則だ。

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『戦略PR 世の中を動かす新しい6つの法則』 「商品力」や「宣伝力」だけでは、もはや人は動かない。 ![]() |
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