テスラの自動運転に乗ってみた「我が子に“はじめてのおつかい”を頼むようなハラハラ感がたまらない」
ウインカーを出すと、そっちへ自動で車線変更もしてくれるが、ウインカーを出すタイミングには、高度な先読み能力が求められる。「今このタイミングで出せば、コイツ(100歳のジジイ)でも車線変更できる!」と見越して、「今だ!」と戦艦の主砲を撃つ気合でウインカーを出すのだ。命中したときのヨロコビは天を突く。
はっきり言おう。自分で運転したほうが100倍ラクだし100倍安心! これは“はじめてのおつかい”だ! 我が子の成長を願う親は、清水の舞台から飛び降りる覚悟で我が子におつかいを言いつける。そりゃもうハラハラして見てらんない。あの感じだ!
一応テスラを弁護すると、こういう印象になったのは、いきなり首都高の都心部でONにしたから。舞台が広大なアメリカの空いた高速道路なら、きっと優雅に自動運転を楽しめたんだろう。いきなり首都高はハードルが高すぎた。
えっ、合流はどうしたのかって! オートパイロットのまま「おりゃー!」とウインカー出してみたけど、うまくいかずに最後は自分でやりました。無念。
さすがテスラのCEOイーロン・マスクはスゲエ! 同じくCEOを務めるスペースX社で「ロケット打ち上げ費用を100分の1にする」と豪語するだけのことはある。ぜっんぜん失敗を恐れていない。そう、テスラのオートパイロットは、ファルコン9ロケットの垂直着陸と同じだ! ひょっとして日産やスバルのほうが、技術的には進んでいるかもしれない。しかし既存の自動車メーカーには、今の段階で自動運転の認可を申請するような蛮勇はゼロだろう。石橋を叩いて渡ってちゃ女にモテない。やりたいことをやっちゃうからモテるし世の中を変える。テスラにはそれがある!
幸いテスラを買うのは、刺激を求める新しもの好きの富裕層。100歳のジジイではない。彼らはこの“はじめてのおつかい”を大いに楽しんで短期間で使いこなし、女にもモテるだろう。「ぶつかったらどーすんだ!」とか言ってるヤツは永遠にコタツで丸まってろ!
【結論】
テスラのオートパイロットを使いこなすのは難しいからこそ挑戦したくなる。スポーツと同じだ。「万が一何かあったら」という思考とは3万光年離れたところにある。進歩とはこういうところから生まれるのでしょう
※ファルコン9はスペースX社が手掛けるロケット。低コストで探査機やヒトを宇宙に送り込める再利用ロケットとして注目されている1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中
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