「ニコニコ超会議2016」が、4月29日、30日に千葉・幕張メッセで開催された。
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昨年の来場者数はのべ15万1,115人、公式生放送を視聴したネット来場者数は794万495人となり、「niconico」過去最大の規模で幕を閉じた。客層の大半が10~20代の若者で、女性の来場者も多いことから世間への浸透ぶりがうかがえる。今年はGW初日からの開催となり、天候にも恵まれ、会場は若者の熱気で溢れかえっていた。「超会議」を一言で表現すると、カオスという言葉が似合う。
初音ミクがついに歌舞伎とコラボ
「ニコニコ超会議2016」1日目の見どころを振り返っておこう。まず、今年の目玉として歌舞伎役者・中村獅童とボーカロイドの初音ミクによる「超歌舞伎」が上演された。演目は、小説や舞台、映画などのメディアミックス展開で不動の人気を誇る初音ミクの定番曲『千本桜』と、歌舞伎の代表的な演目のひとつ「義経千本桜」を融合させた「今昔饗宴(はなくらべ)千本桜」だ。
「今昔饗宴千本桜」は、日ノ本の象徴である大樹「千本桜」をテーマに、大正100年・平安時代・神々の時代の3つの時代をつなぐ物語。ミク演じる初音未來が美玖姫として、青音海斗が中村獅童演じる佐藤四郎兵衛忠信として生きた平安時代、さらにある事件が起こった1000年前の神々の時代へ。転生を繰り返しながら千本桜とともに大正100年へと至る、美玖と海斗を中心にストーリーが展開した。
定式幕が引かれると、袴姿の中村獅童とともに、舞台にプロジェクションマッピングで映し出された初音ミクが登場。この演出は、NTTが研究開発を進めてきた「Kirari!」の「バーチャルスピーカ技術」によるもの。ニコニコ生放送では、AR技術でさらに高精細な初音ミクの姿が表現された。
昨年の「超言論エリア」の解釈を拡大した「超トークステージ」の「ネット言論はどこへ行ったのか?」をテーマにした議論では、東浩紀氏、津田大介氏、夏野剛氏、西村博之氏、堀江貴文氏、中川淳一郎氏ら錚々たるネット論壇が登場。
テレビの言論空間で中心として君臨してきたジャーナリストの田原総一朗に比類する存在がいまだに生まれない理由や、今後ネット言論の世界から後継者は現れてくるか、といった激論を繰り広げた。20代、30代の書き手は「炎上を恐れすぎて、いい人になろうとしている」との言葉が印象的だった。
また、ネット言論の世界において尖った存在感を放っていた「ニコニコ動画」の現在や、もはや求心力を失ってしまった論壇の可能性、多発する炎上など、刺々しい感情が目立つ近年のネット界隈について語られた。
“ラスボス”小林幸子が登場した「超野球」
幕張メッセに隣接するQVCマリンフィールドでは「超野球」が行われた。千葉ロッテマリーンズ対北海道日本ハムファイターズの始球式を務めたのは、ラスボスの愛称で親しまれる歌手の小林幸子だ。始球式の開始が球場内でアナウンスされると、車体後方に翼がついた特別仕様のリリーフカーで小林幸子が登場。
小林がマウンドに降り立ち、バッテリーを組む超野球キャプテンの里崎智也氏、バッターを務める千葉ロッテマリーンズの江村直也選手が打席につくと、いよいよ超始球式がスタート。小林のバズーカ砲により豪速球が放たれ、バックスクリーンには史上最速の球速“999キロ”が記録された。
年間を通して東京ビッグサイト、幕張メッセの大規模イベントの大半を取材し続けてきた記者が感じたのは、「ニコニコ超会議」の10代、20代への圧倒的な求心力だ。GWの初日に京葉線で海浜幕張駅への道すがら、東京ディズニーランドへ向かう乗客だと思っていた少年少女たちのほとんどの目当ては「ニコニコ超会議」で、会場で見かける彼ら彼女らの目はいつも輝いていた。
<取材・文/北村篤裕 撮影/山川修一>