“名優”パイパーと“新進”ブレットの短編映画――フミ斎藤のプロレス講座別冊WWEヒストリー第126回
試合終了後、パイパーはキャンバスに座り込んだブレットを抱き起こし、みずからインターコンチネンタル王座のベルトを新チャンピオンに手渡した。WWE在籍9年(当時)のパイパーがチャンピオンベルトを手にしたのは意外にもこのときだけで、必然的にブレットはそのパイパーをチャンピオンの座からひきずり降ろしたただひとりのWWEスーパースターとなった。
ホーガンとのシングルマッチでもただのいちどもフォール負けを許さなかったパイパーがブレットに完敗し、インターコンチネンタル王座を明け渡した。ふたりは笑顔で握手を交わした。“ナンバー2”の番付のバトンタッチをディスプレイする象徴的シーンとしてはもうそれだけで十分だった。
パイパーはこの試合を最後にWWEのリングからフェードアウトし、約2年間の“引退生活”に入った。ホーガンの後継者になるはずだったジャスティスは、“レッスルマニア8”から3カ月後、ドーピング検査の陽性反応であっけなく解雇処分となった。ブレットはバックステージのいちばん奥のほうから“猿山”の力関係をつぶさに観察していた。(つづく)
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文/斎藤文彦 イラスト/おはつ
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斎藤文彦
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