Xパック電撃復帰とHBKのいないDX――フミ斎藤のプロレス講座別冊WWEヒストリー第288回(1998年編)
XパックのWWE復帰は、ドラマの設定上はトリプルHとXパックの個人的なつながりによるものということになっていたが、じっさいにはショーン・ウォルトマンはすでにWCWを退団し、契約上はフリーエージェントの立場にあった。
首のケガで故障者リスト入りしていたウォルトマンの自宅に、ある日、3年専属契約の途中解除を通告する文書がWCWから送られてきた。ウォルトマンの事実上の解雇は、ウォルトマンの兄貴分で団体内の“不満分子”としてWCW首脳部がその取り扱いに困っていたケビン・ナッシュとスコット・ホールのふたりに対する一種の“けん制”だった。
ナッシュとホールはウォルトマンの突然の契約解除に不快感をあらわにしたが、ウォルトマン自身はWCWから解雇通告を受けた直後からWWEサイドと契約交渉を開始し、ジム・ロスWWE副社長はこの年の2月第1週の時点でウォルマンに対して新契約の詳細(年俸、インセンティブ、その他の条件)を提示していた。
WWEからWCWへの移籍組のひとりで、超人気ユニットnWoの主力メンバーでもあったウォルトマンの突然の古巣復帰は――現実にはそうはならなかったが――ナッシュ、ホールら元WWEスーパースターズのUターン現象を連想させた。WCWはどうやら、ウォルトマンの発言力と商品価値を過小評価していた。
リーダーだったショーンの長期欠場によりユニットとしての存続そのものが危ぶまれていたDXは、トリプルH&チャイナの“奇妙なカップル”に旧友Xパックが合流し、さらにWWE世界タッグ王者チームのニューエイジ・アウトローズ(“ロードドッグ”ジェシー・ジェームス&“バッド・アス”ビリー・ガン)が加入していっきに軍団化した。
WWEのロングセラー商品となるDXの第2章はこうしてスタートを切った。ポジションが人材を育てるというセオリーどおり、トリプルHはショーンがいないWWEの長編ドラマの主役としての道を歩みはじめた。
それはトリプルHが初めてほんとうの意味で現実=リアリティーと虚構=ファンタジーの境界線のないエリアのボスになった瞬間だった。(つづく)
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文/斎藤文彦 イラスト/おはつ
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