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「ラ・ラ・ランド」から「チア☆ダン」への流れを読む【コラムニスト木村和久】

オヤジ受けする理由③余韻がありまくり

 「セッション」のラストは、演奏を終えてエンドロールです。普通は聴衆がいるのだから、演奏を聞いてのリアクションを期待しますよね。でもセッションだから、あくまで2人の関係性が大事でしょ。2人でどんな時間を過ごしたのかを映像をから読みとれば、それでいい。多分そう演出したかったのでしょう。この「引き算」的な演出は、びっくり仰天です。  一方、「ラ・ラ・ランド」は、これでもかというほどの終わりが長い「足し算」の演出です。詳しいことは書けませんが、本編後の「エピローグ」的な映像もてんこ盛りです。これは年配のお客さんはくどい、しつこい、余韻に浸りがちという習性を巧みに使った演出だと思います。巨人が勝てば、翌日のスポーツ新聞3誌ぐらい買って、余韻を楽しむ。全部同じことしか書いてないのに、また読む。こういうオヤジ心を、汲み取った映画が「ラ・ラ・ランド」といえます。  とまあタラレバ万歳で、お姉ちゃんと二度目の映画鑑賞に行こうとしたら「ラ・ラ・ランド」は、人気のロードショーだから後でいい。それよりも気になるのは「チア☆ダン」(チア☆ダン 女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話)で、それを見たいとのたまう始末。 「ラ・ラ・ランド」はアカデミー賞6冠だよと言っても、それがどうしたって感じなのです。仕方ない。騙されたと思って「チア☆ダン」を見にいったら、おじさんは広瀬すずに泣かされてしまいました。いやあ~「ラ・ラ・ランド」より、断然「チア☆ダン」がいい。というか、遠いハリウッドの夢物語より、日本で同世代のコ達が成し遂げた偉業の方が親近感湧きまくりですばい。  キャストも小柄で笑顔しか取り柄のないキャラの広瀬すずと、ダンス優等生の9等身美女の中条あやみ、このふたりの切磋琢磨が実にけなげです。加えて、意外に好演したのが天海祐希だった。その前の「恋妻家宮本」が不発に終わっていただけに、今回はコワオモテの鬼監督役がはまってて面白かった。  「チア☆ダン」は、福井の高校生チアダンスチームが創部3年目で全米大会に出場して優勝するまでの話で、実際にあった最近の出来事だから、ゆとり以降の世代にとっては、いい刺激になったのではないでしょうか。おっさん世代が見ても、感情移入できしまうことが凄いしね。  過去の名作を繋げてみると、「フラガール」「スイングガールズ」そして「チア☆ダン」が「女子団体青春3部作」になるのではないか。それぐらい評価を高くしてあげたい。  だめだめサークルの復活は「スクールウォーズ」風だし、天海は「フラガール」の松雪泰子と比較されそうですね。クラブのメンバー集めのエピソードは「少林サッカー」風だし、試合や競技をあまり見せない演出は「タッチ」に近いのかも知れない。まあ最後に圧巻の、チアダンスを見せてくれましたけど。この出し惜しみの演出も効果的でした。
木村和久

木村和久

 これは人生の応援歌として、若い人たちの背中を押しているのではないでしょうか。頂点に立った者しか見れない景色がある。それを見て来いと言われて、実際に見れたことがたまげます。「チア☆ダン」はひょっとして大化けする可能性があり、今年の映画賞レースが楽しみです。 ■木村和久(きむらかずひさ)■ トレンドを読み解くコラムニストとして数々のベストセラーを上梓。ゴルフやキャバクラにも通じる、大人の遊び人。現在は日本株を中心としたデイトレードにも挑戦
トレンドを読み解くコラムニストとして数々のベストセラーを上梓。ゴルフやキャバクラにも通じる、大人の遊び人。現在は日本株を中心としたデイトレードにも挑戦。著書に『50歳からのかろやか人生』
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