拡幅工事や新規ICができても「全国最悪の渋滞ポイント・大和トンネル」の渋滞解消がほど遠いのはなぜ?
もちろんインターチェンジが増えるのは望ましいことだが、気になるのは、その位置がちょうど大和トンネル上り渋滞の途中に当たることだ。綾瀬スマートICが完成すれば、それまで厚木で降りていたクルマの一部が綾瀬まで東名に乗り続け、渋滞が悪化する可能性がある。大和トンネルの拡幅が完成するのは約3年後。間の2年間の渋滞悪化は大丈夫なのか?
これについてNEXCO中日本は、「大幅な悪化はないと考えています」とのことだが、具体的な予測データはない。
実は4年前、国土交通省関東道路整備局職員による研究発表(※)があり、あくまで個人的な研究データながら、綾瀬スマートIC開通による渋滞悪化は「1%」と算出されている。これは誤差の範囲内とも言え、確かに大幅な悪化ではない。加えてこの研究では、大和トンネルの部分拡幅(現在工事中の内容とほぼ同一)が行われた場合の渋滞減少は「約3割」。横浜町田―海老名JCT間全線に付加車線が設置された場合は「ゼロ」、つまり解消すると算出されている。
これはあくまで個人的な研究であり、公式なものではないが、目安にはなろう。少なくとも現在行われている部分拡幅では不十分であり、私が以前から主張しているように、横浜町田-海老名JCT間を上下線とも4車線(付加車線含め計8車線)にすべきであることを示している。
国交省はこの拡幅工事について、当初から「運用開始後の交通状況に応じ、追加対策も検討」としている。追加対策が必要なことは最初から明白なのだが……。つまり、大和トンネル渋滞の解消は、まだまだ先が見えないと言えるだろう。
取材・文・写真/清水草一(道路交通ジャーナリスト)
※研究発表タイトル『スマートIC整備による高速道路の渋滞個所における交通動態の検証方法について』神森友秀
【清水草一】
1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中。清水草一.com

―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―
1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中 1
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