記録ずくめ「キックの神童」18歳・那須川天心 RIZIN直前に語ったプロ魂
伝説を打ち立てた18歳のニューヒーローが再びRIZINのリングに上る――。
昨年の大みそか、カイオカ・オリージョ(27=米国)に2R1本勝ちしたキックボクシング界の“神童”、那須川天心は、そのわずか2日前の12月29日に総合格闘技デビューしたばかりだった。那須川は無謀としか思えない連戦を自ら「直訴」。中1日という強行スケジュールにもかかわらず、RIZINの大舞台で2R37秒、対戦相手を左フックでぐらつかせたのち左腕で首を絞め上げ、完膚なきまでの総合デビュー2連勝を飾った。
キックボクシングとの出会いは小学6年だが、高校1年の夏にプロデビューすると、史上最年少の16歳でRISEバンタム級王座を獲得。破竹の勢いでキックの王座を次々に奪取していった。
アマチュア時代から“神童”と呼ばれ、多くの格闘技関係者が「間違いなく今後の格闘技界を背負って立つ選手」と口を揃える逸材だが、そんな彼の強さの源は幼いときから父の影響で始めた極真空手だったという。4月16日に横浜アリーナにて開催される「RIZIN 2017 in YOKOHAMA – SAKURA – 」に向けトレーニングに励む那須川が話す。
「正直、最初はやりたくなかったんですよ。でも父親に空手の道場に連れて行かれて、結局始めました。その後小学5年生のときに極真空手のジュニア世界大会で優勝して、空手はやりきったかな……と思っていたときに、テレビでキックボクシングを見て、それに憧れてキックに転向したんです」
キックボクシング転向後いくつもの世界タイトルを獲得した彼が、アマチュア時代もっとも印象に残っている試合は、意外にも「負けた試合」だったという。
「中学1年くらいのときにムエタイの本場、タイに行ったんです。それまではキックボクシングしかしたことがなかったので、初めてのムエタイで腕を首に掛けて肘や膝で攻撃する首相撲では散々負けました。試合後、観光をする予定だったのですが、それどころではないくらいにやられましたね(笑)」
ムエタイでボコボコにやられたとはいえ、彼のアマチュア時代の戦績は105戦99勝5敗1分37KOと、黒星はわずかに5つ。その後、2014年の15歳時にプロ転向。デビュー戦では、当時バンタム級7位だった有松朝を1R58秒KOで倒した。
「ジュニアでやっていてある程度強くなりだした中学3年の頃にプロを意識し始め、練習時間確保のために4年制の高校に進学しようと決めたんです。その甲斐あってプロデビュー戦は勝てましたが、別の競技かと思うくらいにプロとアマの違いを感じました。もちろん選手のレベルも違いますし、緊張感も全然違います。アマチュアは自己満足ですが、プロになるとスポンサーさんやチケットを買ってくれた人、日頃からサポートしてくれている人のために戦わなきゃいけないんだ、ということが最近やっとわかってきました。緊張せずに普段通り試合ができるようになってきたのはデビュー4戦目あたりからですかね」
プロ6戦目に史上最年少記録となる16歳でRISEのバンタム級王座であった村越優汰を破り王座を獲得。高田延彦が「50年に一人の逸材」と絶賛した。
「これはプロ転向後一番印象に残ってる試合ですね。プロになってよかったなと思えた瞬間でした。下馬評では僕が負けると言われていましたが絶対に勝てると思っていて、どこをどうしたら負けるのかわからなかったです。王座になったあたりから周りの反応も変わってきました」
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