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海外旅行者に「物品の配送」を依頼するサービス…麻薬密輸の危険性も

「依頼された物品を運びます」  こんなオンラインサービスが、物議を醸し出している。日本にはなく、海外にあるもの。或いは日本にあって、海外にないもの。それを欲している人と、これから該当国に渡航する人をマッチングして物品の配送を実現させる。
トランク

※画像はイメージです(以下同)

 言い換えれば、「旅行者の荷物の余裕をシェアする」というコンセプトを売りにしたこのサービスだが、SNSでは批判が相次いでいる。しかし、このサービスのどこが問題なのか?

「荷物の余裕」をシェアするサービスが炎上

 PicUApp社の運営する「HAKOBIYA」というサービスが、議論の渦中にある。HAKOBIYAのアプリの仕組みはこうだ。  日本に住むAさんは、東南アジア某国の手工芸品をどうしても入手したいと思っている。そこでHAKOBIYAのプラットフォームに「この手工芸品が欲しい!」と画像付きで投稿する。  某国から日本に旅行する予定のBさんが、Aさんの投稿を見て取引の仮契約を結ぶ。その後、チャットでミーティングを行い、本契約に移行する。Aさんの望む手工芸品は、日本円換算で5000円である。まずはAさんがHAKOBIYAの決済プラットフォームに、購入費用5000円とBさんへの報酬1000円を合算して振り込む。この時点でお金はBさんへは渡っていない。つまりBさんは、一時的に費用を立て替える形で手工芸品を買う。  後日、日本に観光旅行で渡航したBさんはAさんと落ち合い、頼まれていた手工芸品を渡す。この時、問題がなければ決済プラットフォームにAさんが預けたお金(計6000円)がBさんに移るという流れだ。上記とは逆に、日本から某国に物品を配送するパターンももちろんある。この仕組みがSNSで大炎上し、運営元のPicUApp社にも批判が及んでいる。

数年前にも存在した「他人の荷物を運ぶサービス」

 問題視されているのは、Bさんはあくまでもひとりの旅行者に過ぎず、Aさんとも面識がないという点だ。日本に限らず、地球上のどこの国でも「他人の荷物を運んであげる」という行為は危険なものと見なされている。  数年前に「Cargo2share」というサービスが存在した。これは上記のHAKOBIYAよりも露骨な内容で、小包や手紙等の荷物の配送を頼みたい人と、それを引き受ける人をマッチングする。一方で、実際に配送される物品の内訳に関してCargo2shareは直接関わらないという態度を示していた。これが世界中で非難されることになる。  では、HAKOBIYAはどうか。このサービスは購入希望の物品の画像を予め公開し、それを該当国で買ってきてもらうという仕組みを採用している。これだけを見れば、依頼者でも中身を知らない「謎の小包X」の配送を押しつけられる心配はないように思える。

iPhoneを500円で買ってきて

 が、実際にHAKOBIYAのアプリを見てみると、怪しい投稿も目立つ。「iPhoneが欲しい!」という投稿に提示されている購入費用が僅か500円だったり、どう考えても自国内で簡単に買えそうなものをリクエストしていたりで、このアプリの利用者がどこまで本気なのか疑わしいというのが筆者の正直な感想だ。  そもそも、このアプリに並んでいる物品配送の報酬はどれも数百円程度。中には5600円というものもあったが、それは荷物としてはかさばる家電製品を運び切った場合の報酬額。手軽なサイズのものは、軒並み500円以下である。  残念ながら、リスクを買って出るだけの報酬額ではない。くどいようだが、「他人から依頼された荷物」を旅行者自身が空輸する行為はリスクが伴う。そして、そのリスクに対するPicUApp社の説明が不足している点が、結果的にSNSの炎上を巻き起こしてしまったようだ。
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麻薬密輸の危険性
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ノンフィクション作家、Webライター。1984年10月11日生。東南アジア経済情報、最新テクノロジー、ガジェット関連記事を各メディアで執筆。ブログ『たまには澤田もエンターテイナー

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