ジェンダーの壁を乗り越えて、男女が相互理解するためには?
女装タレントやジェンダーレス男子が活躍する昨今。ジェンダーの壁は崩壊を始め、男性の女性理解は深まっているのだろうか。
「派手な存在や言葉が、そのインパクトによって表面的にだけ受け入れられ、深い理解に結びつかない危険性があります」
そう語るのは、ジェンダー学・男性学を研究する水島新太郎氏。
「新しい言葉が作られることで、人間の多様性を考えるきっかけを持つことはいいことですが、ジェンダーレス男子と騒がれている人たちは、本当の意味でジェンダー問題には興味がないように見えます。彼らはSNSを通じて自分をアピールすることに終始しています。さらに、彼らを持ち上げている大衆は、SNS上でつながっている人間に簡単に共感し、結果として言葉の深い意味を考えず受け入れるようになってきている。なので、彼らがどんなに活躍したとしてもジェンダーを超えた女性理解が深まる可能性は低いでしょう」
どうすれば、女性への理解を深めることができるのだろうか。
「女装体験などもよいですが、経験したことで“自分でもこれだけできるんだから、女性であるお前はもっと頑張れ”というような新たな男性至上主義が生まれてしまうのでは意味がありません。また、女性を理解しようとするのと同時に、男性のことを女性に理解してもらうことが大切。理解を深めるとは、両者が互いに互いの問題を知り意識することで、お互いに共感し合える点を見つけていくこと。片方からだけでは成立しません」
ベルリンの壁崩壊は一人の男の勘違いから始まったが、ジェンダーの壁の崩壊は勘違いなしの相互理解からしか生まれそうにない。
【水島新太郎氏】
’81年生まれ。同志社大学講師。ジェンダー学・男性学研究者。著書に『マンガでわかる男性学~ジェンダーレス時代を生きるために』(行路社)
取材/文 加藤純平(ミドルマン) 丸山竜矢 岡野孝次 六原ちず(中野エディット) 古澤誠一郎 ふみくん 撮影/長谷英史
― 男性記者が実体験オンナは大変だった! ―
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