翁長沖縄県知事・最側近集団の衰退ぶりを露呈した那覇市議選――次男が当選しても喜んでいられない
フタを開けてみると、城間市政の与党にあたる共産党や社民党など各党派の獲得議席は、定数40のうち16議席。翁長氏寄りの姿勢が目立つ地元紙ですら「城間市政に厳しい評価」との見出しをつけざるを得なかった。なかでも注目すべきは、保守系市議のグループ「新風会」の退勢ぶりだ。
新風会とは、2014年の県知事選を前に、自民党県連の意向に反して辺野古移設反対を主張していた翁長氏を知事選挙の候補として出馬要請をした元自民党市議らのグループだ。自民党から除名処分を受けると、那覇市議会に新会派を立ち上げ、あくまでも翁長氏を支える姿勢を示してみせた。いわば、翁長氏の最側近集団ともいうべきグループだったのである。
一時は議員の数が12人と市議会で最大勢力を誇り、2014年の県知事選挙では共産党や社民党などともに翁長氏の当選に向けてフル回転し、「イデオロギーよりアイデンティティ」をキャッチフレーズに革新から保守までを網羅するとした翁長氏の支持勢力「オール沖縄」のなかで保守の中核を担っていた。那覇市だけでなく、沖縄県内の他の市にも新風会系の議員を擁すなど、翁長氏の勢いと相乗効果で影響力を拡大していた時期もあった。
だが、新風会のリーダーであった安慶田光男氏は、翁長県政誕生とともに副知事となって市議会を去り、さらに分裂や昨年の県議会選挙への転進などもあった。なお、県議選に撃って出た2人はいずれも落選。議席数を5まで減らしていたのである。
今回の那覇市議選の結果は、翁長知事の次男の雄治氏を含めて当選3人。選挙前よりさらに2議席減らしたことになる。新風会から輩出されて市議会議長を務めたベテランの現職も次点にとどまり落選した。雄治氏に得票が集中し過ぎて他候補が落選するという選挙戦略上のミスもあった。もはや新風会は会派としての存続すら危うい状況なのである。
与党にあたる各党派の獲得議席を見てみると、議席を伸ばしたのは共産党だけ。与党の最大勢力となったことになる。この点について『琉球新報』は投票日翌日の7月10日付紙面でこう指摘している。
<今回の選挙では、共産党が議席を伸ばし、与党内の最大会派となった。今後控える議長選出などで共産が主導力を発揮すればするほど、オール沖縄を構成する一部の保守層や別の革新政党からの反発も予想され、今後の選挙においても共闘の枠組みにほころびも生じかねない>
まさにそのとおり。共産党主導の議会となることで、保守層がいっそう離れ、オール沖縄が看板倒れになるのではないかとの懸念には、翁長知事も焦りを募らせているのではないか。
今年の沖縄県内での注目選挙はこれで一区切りがついたが、来年は1月早々に名護市長選、11月には県知事選と那覇市長選と重要選挙が目白押しだ。『沖縄タイムス』は7月10日付記事で今回の那覇市議選が来年の選挙に及ぼす影響をこう指摘している。
<与党が過半数を得られず、「名護市辺野古の新基地建設反対」などを掲げて保守の一部と革新勢力が連携する「オール沖縄」への打撃となった。来年の那覇市長選や県知事選で、最大の人口を掲げる県都・那覇市の動向が情勢を大きく左右する。城間市長や翁長雄志知事を擁立した「オール沖縄」勢力は戦略の見直しが必至だ>
「民意」を背景に辺野古移設阻止を掲げてきた翁長知事。選挙での敗北が重なることは正当性を失うことになる。来年に向けてどのような手を取り得るのだろうか。
取材・文/竹中明洋
1
2
『沖縄を売った男』 翁長氏とはまったく異なるアプローチで沖縄の基地負担軽減に取り組んだ仲井眞氏を通して、基地問題を見つめ直した一冊 |
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ