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ホーレス・ボウダーが目撃した“川崎ファッキン球場”――フミ斎藤のプロレス読本#097【Tokyoガイジン編エピソード07】

 じっさいにプロレスラーになってみると、ホーレスにとって“あの人”の存在は巨大なトラウマだということに気がついた。そんなことをいいふらしたおぼえはないのに、アメリカでも日本でもみんなが“ホーレス・ボウダー”がアメリカン・ヒーローの甥っ子だということを知っていた。  クローズラインを使えばアックスボンバーにこだわっていることにされちゃうし、あまり深く考えずにギロチンドロップをやったりして、尻もちをつきながら「しまった」と思ってハッとしたことが何度もあった。  だいたい、顔つきがよく似ている。そんなところは似なくてもいいのに、頭のてっぺんのほうはイヤになるくらいそっくりだ。でも、ひょっとしたらボルド・ヘッド(ハゲ頭)はとってもお洒落かもしれない。ホーレスが大好きなパンテラもそうだけれど、バカ売れしているロックバンドのボーカルにはツルツル系がたくさんいる。  そもそも、自分にいちばん欠けているもの、足りないものはいろいろなシチュエーションでの思い切りのよさなのだということはよくわかっている。  頭の上のほうがいよいよ全滅してくると、ホーレスは後頭部のあたりに残っていたしっぽのような髪をきれいさっぱり剃り落した。偉大なる叔父貴にだってこれはできなかった。鏡に映ったピカピカの頭をにらんでいたら、なぜかガッハッハと笑いがこみ上げてきた。  メインイベントのリングは、まだ遠いところにある。ついさっき試合をやったときは川崎球場の3万人の大観衆がすぐそばにみえたのに、バックステージの奥のほうから同じ景色をながめると、やっぱりあれは“ホーレス・ボウダー”を観にきたお客さんではなかったことを思い知らされる。  長くてスキニーな脚はブラック・デニムの下にしまっておこう。上のほうがピカピカなら、顔の下のほうには立派なヒゲをたくわえておこう。メタル系のサングラスも必需品になってきた。アメリカン・ヒーローとはできるだけ距離をとっておくことである。(つづく) ※文中敬称略 ※この連載は月~金で毎日更新されます 文/斎藤文彦 イラスト/おはつ
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