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知ったかぶりしたい「乙類焼酎の世界」 原料・製法でこれだけ違う

 ところで、 「甲乙混和ではないのに、やけにスッキリしてマイルドな乙類焼酎があるな」 と思ったことはありませんか? これは減圧蒸留という方法で蒸留した焼酎です。減圧蒸留に対して通常の蒸溜を常圧蒸留といいます。  減圧蒸溜は1970年代に登場した新しい蒸留法で、90度くらいで沸騰する常圧蒸留に対して、蒸溜機内の圧力を下げ、40~50度くらいの低温で沸騰させる方法です。高い山に登ってお湯を沸かすと、気圧が低いために低い温度で沸騰するのと同じ理屈です。  こうすると、沸点の高いクセや臭みの原因になる成分は蒸溜されないので、雑味のない淡麗な味になります。麦焼酎「いいちこ」がその代表格で、米焼酎では「白岳しろ」、黒糖焼酎では「れんと」、泡盛では「残波」などが減圧蒸留です。飲み応えという点ではイマイチですが、乙類焼酎を飲み慣れない人には好評なので、スーパーやコンビニでも買える人気銘柄となっています。

「下町のナポレオン」の愛称でもお馴染み。大衆焼酎の代表格だ

 もうひとつ、一時たいへんな人気だった麦焼酎「百年の孤独」は、樫樽貯蔵といって、バーボンの樽などに一定期間寝かせています。こうした樽貯蔵の焼酎はほかにもけっこうありますが、ウイスキーやブランデーなどと比べてなんとなく色が薄いと思いませんか?

幻の焼酎として根強い人気を誇る「百年の孤独」

 これはウイスキーやブランデーと混同しないように、色は薄くなければいけないという酒税法の決まりがあるからです。樽貯蔵した焼酎とウイスキーなんて、色が同じでも絶対飲んだら判別できると思うのですが……。  そういうわけで、色を薄くするため、樽に少し入れたあとはタンク貯蔵をするとか、タンク貯蔵をした同じ年代の焼酎で薄めるとか、メーカーは様々な苦労をしているようです。こうした制約がありながら、「百年の孤独」のようなヒット商品を生み出すのですから、焼酎メーカーの技術力はたいしたものですね。  最後になりましたが、水も焼酎づくりに欠かせない原料です。蔵ごとに敷地内の井戸水などを使用するのは日本酒と同じで、これは仕込みだけでなく、度数を調整するときの割り水にも使われます。ですから、良い水のあるところに良い焼酎があるといって良いでしょう。  乙類焼酎は原料からくる個性に加えて、麹の種類や蒸留方法によっても味わいに変化のあるバラエティに富んだお酒なのです。 【江口まゆみ】 神奈川県鎌倉市生まれ。早稲田大学卒業。酒紀行家。1995年より「酔っぱライター」として世界中の知られざる地酒を飲み歩き、日本国内でも日本酒・焼酎・ビール・ワイン・ウイスキーの現場を100軒以上訪ねる。酒に関する著書多数。SSI認定利き酒師、JCBA認定ビアテイスター
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