サブゥーの心のリングはFMファッキンW――フミ斎藤のプロレス読本#121【ECW編エピソード13】
「それで、最終的にはだれとだれが来ることになったの?」
ボストンでライヴがあった夜、ドレッシングルームでジャパン・ツアーに関する全体ミーティングが開かれた。会議をシキるボスのポール・ヘイメンが「FMW!オーニタ!」を大声で連発しているシーンをサブゥーはちょっと離れたところからながめていた。
ECWとFMWがいっしょになにかをはじめる。これはとってもすばらしいことだ。同じくらいのサイズの、よく似たコンセプトのふたつのインディペンデント・レーベルがフィラデルフィアとトーキョーで“伝説の男”テリー・ファンクを共有している。
サブゥーはFMWに対して特別な感情を抱いている。“アラビアの怪人”ザ・シーク様がいて、大仁田厚がいて、いまここにサブゥーがいる。
サブゥーが発案した自殺ダイブの数かずを最初に観客のまえでトライさせてくれたのがFMWであり、大仁田だった。FMWはサブゥーがサブゥーであることの自由を与えてくれた場所。初めて“魔法のじゅうたん”ですいすい空を飛んだイニシエーションの地である。
FMWとECWが融合する瞬間に自分がその場所にいないというシチュエーションはどうしても理解できない。ほかのだれよりもそこにいなくてはいけないのはサブゥーなのだ。
「オレは行くよ。来なくていいといわれても行くよ。イッツ・ナット・フォア・ザ・マネーIt’s not for the money(お金のはなしじゃない)」
アメリカ人――アラビアの血が流れるアメリカン――がお金のことではないというからにはお金のことではない。
ECWのスローガンは“イッツ・ナット・フォア・エブリバディーIt’s not for everybody(一般客はお断り)”で、サブゥーのアテテュードは“イッツ・ナット・フォア・ザ・マネー”である。
サブゥーはECファッキンWのみんなを“魔法のじゅうたん”に載せてト―キョーまで飛んでこようとしていた。
※文中敬称略
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文/斎藤文彦
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