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なにがあっても「防衛費は増やさない」――潜水艦隊が実員のいない幽霊艦隊になる日

 ではどうするか。そもそも必要な金額には到底足らないので、とにかく「自分たちの努力でどうにかなるもの」から減らしていくのです。隊員用のトイレットペーパーがなかったり、隊舎の洗濯機や暖房装置や冷蔵庫が壊れても修理せずに放っておけば、さすがに困った隊員たちが自腹でトイレットペーパーを補充したり修理費を負担して直そうとしたりします。そういうことが積み重なって、今の惨状になっているのです。自衛隊が隊員をひどい目に遭わせようと思ったわけではありません。最初から足りない予算のなかで、無理なやりくりを押し付けられているのです。  自衛隊が、トイレットペーパー代くらい国で買ってほしいと要求しない理由も明白です。予算の上限が決まっているので、国がトイレットペーパー代を出すと決めれば、大事な弾薬や燃料や演習、訓練費などの費用がそのために削られることになります。制服などの消耗品が買えず、修理できない装備品が多くても我慢している理由も同様です。  それでも、周辺事態には対処しなければならないので、当然、新しい装備品を買う必要は出て来ます。その場合は「何かを増やしたら何かを減らす」のです。今、防衛費は微増になっています。でも、微増ではまったく話になりません。現在のGDP比1%5兆円ではなく、せめて先進国の軍事費のスタンダードであるGDP比2%程度の10兆円規模がないとお話にもならないのです。  国家の根幹は治安維持と国防です。もっとも大事な国防には予算をきちんとつけてもらわないと困ります。国防がしっかりしてないと、私たちの生命や財産が奪われてしまうのです。「自衛隊が本気を出して戦えば北朝鮮なんて簡単にやっつけられる」と思っている人は多いと思います。でも、そんな余裕のある準備ができるような予算はどこにもありません。もう、現実を知れば知るほど涙・涙・涙なのです。  米軍では、ミサイルなどの弾薬は必要数を何年か毎に一括調達してごっそり備蓄しています。だから数年単位の弾薬があるのが普通です。一方で我が国は、ほんのわずかな予算の中でちまちまとやりくりして弾薬を買っています。対北朝鮮の迎撃でミサイルが尽きた後は、我が国に迎撃の手段はありません。北朝鮮が全力を出せば2日間で我が国の迎撃ミサイルが尽きると予想する軍事評論家もいます。その後は撃たれ放題です。自衛隊のなけなしの弾薬や燃料が尽きた時、我が国の命運は尽きるのです。 「必要でも予算は前年度より可能な限り低く抑える」、それがこの国の予算編成の鉄則です。さらに、使わなかった予算は大幅に減額されるか、なくなります。  畳み掛けるように自衛隊員の待遇が悪化し給料も減額されているので、隊員の数も減り続けています。必要な要員数を充足できない部署があちこちにでき、自衛隊の能力が損なわれつつあります。それなのに「人が減って運用できなくなったら、その部署や定員そのものを減らす」という対応に終始しているのです。  人員不足で使えない部署をなくせば節約できますがそれでいいのでしょうか? 潜水艦隊などはすでに運用が難しくなっていると聞いています。毎年どんどん現員が減っていくせいで、体面を整えるように一隻あたりの定員を減らし、さらに過剰労働で隊員が減り続けているのです。近日中に潜水艦隊は、実員のいない幽霊艦隊になります。でも予算は削減できる、そういう発想なのです。  これでは近いうちに必ず安全保障上の穴が空きます。予算がないため、人も装備も弾薬も燃料も足りない。こんなことで北朝鮮有事に対処できるのでしょうか。日本の防衛が本当に不安です。<文/小笠原理恵>国防ジャーナリスト。関西外語大卒業後、広告代理店勤務を経て、フリーライターとして活動を開始。2009年、ブログ「キラキラ星のブログ(【月夜のぴよこ】)」を開設し注目を集める。2014年からは自衛隊の待遇問題を考える「自衛官守る会」を主宰。自衛隊が抱えるさまざまな問題を国会に上げる地道な活動を行っている。月刊正論や月刊WiLL等のオピニオン誌にも寄稿。日刊SPA!の本連載で問題提起した基地内のトイレットペーパーの「自費負担問題」は国会でも取り上げられた。『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)を上梓

自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う

日本の安全保障を担う自衛隊員が、理不尽な環境で日々の激務に耐え忍んでいる……

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