更新日:2022年11月20日 10:01
スポーツ

馬場さんの“武道館のすみっこに座っているお客さんにもわかるプロレス”――フミ斎藤のプロレス読本#147[馬場さんワールド編2]

 馬場監督の目には、(当時の)小橋健太が太り過ぎに映るらしい。あんなに目方が重くなったら動けるはずがない。 「もっとレスリングをしなさい。ムーンサルトはどうなった。ローリング・クレイドルは志賀賢太郎に“お下がり”としてプレゼントしてしまったのか。どうしてそうラリアットが好きなのか」である。  小橋&ジョニー・エース組は、スティーブ・ウィリアムス&ゲーリー・オブライト組に敗れ、手に入れたばかりの世界タッグ王座のチャンピオンベルトを失った。  ヘッドロックも満足にできない選手が“プロレスラー”を名乗っている日本のレスリング・ビジネスの現状を、馬場さんは憂いている。  川田利明にケンカを売りにきた高山善廣(キングダム)はたしかに興味ぶかい素材ではあるけれど「もうちょっとレスリングを勉強して来んと全日本のリングに上がってもらうわけにはいかん」である。  馬場さんのいうところのレスリングとは、世界共通のレスリング・ランゲージのことだ。  いまの日本には馬場さんの知らないプロレスがたくさんあって、馬場さんのあずかり知らぬところでプロレスを練習してきた若者たちがたくさんいる。1960年代前半に“ジャイアント馬場”が学んだプロレスのほうが古典になりつつある。  ほんとうは馬場さん自身がセミナーを開いて伝統的なプロレスの“型”を後進に指導しておくべきなのだろう。 「それをやるには、こっちがトシを食いすぎた」  地方巡業中の合同練習でマウナケア・モスマンにグラウンド・ポジションでの裏技を伝授しようとちょっとよこになったら、なにを思ったのか、モスマンは馬場さんの背中をもみはじめた。  いまどきのプロレスラーたちをもっとよく知りたい。馬場さんの望みはそれだけだ。“東洋の巨人”は翌年1月、還暦を迎える。 ※文中敬称略 ※この連載は月~金で毎日更新されます 文/斎藤文彦
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