タイ・バンコクで野良犬を撮り続ける日本人女性「死んだら私の骨を犬に食べてもらいたい」
その後、サパーンクワイという場所へ引っ越した。ここもタイ人ばかりが住むエリアだったが以前のようなスラム的な雰囲気はなく、周囲に住む人々は“ちゃんとした人たち”ばかりだ。ここのアパートで出会ったのがクマと名付けた一匹の犬だった。
今井は当時、バンコク在住日本人との付き合いはほとんどなく、かといってタイ人との深い付き合いをさけていたこともあり、友人と呼べる者は皆無。彼女にとってバンコクで初めての友達はクマだった。
@inu_grapher)、もう1つは写真メインの「strays’ streets」(@strays_streets)。各々のフォロワー数は「尻尾のない犬」が3500を超え、「strays’ streets」は2000を超えている(執筆時点)。
彼女がTwitterで発信する野良犬の写真や情報は多くの愛犬家を魅了し、活動の認知度は徐々に広がりつつある。
タイにこれほど野良犬が多いのは、日本のように徹底して野良犬を捕獲しないことが1つ。もう1つは、タイでもペットブームが訪れ、犬を飼う家が増えたことにより捨て犬も比例して増加。それらが野良犬になったパターンである。
タイでも通報があれば野良犬は引き取られ、バンコク都内のプラウェートという場所にある収容所で一旦保護される。数週間はこの収容所で過ごし、何割かはウタイタニー県の収容所へ移送。タイの法律により犬は殺処分されないため、ウタイタニー県へ移送された犬は死ぬまで収容所で過ごすことになる。
ちなみに、プラウェートの収容所ではこれまで犬と猫を合わせ通算10万匹以上が保護、ウタイタニー県の施設には常時5000~6000匹が収容されているという。殺処分されないとはいえ、施設内で病気が蔓延すると病死する犬も増えるため、保護されている犬を引き取りたいと申し出る愛犬家や団体もいるそうだ。
上記2つの収容所は公営だが、それ以外にも民間で運営している保護施設もあり、ウタイタニー県だけで引き取れない犬や猫は、他民間の施設が引き取って保護している。
野良犬が徹底して捕獲されない、また殺処分がされないなどタイでこれほど犬が守られているのは、前国王であるプミポン国王の影響が大きいという説がある。
在位70年以上という類い稀な国王である彼は、タイ国民から絶大な支持を受け崇拝されていた。その彼が犬を深く愛していたことが、タイの人々や社会に影響を与えているというのだ。
「それまで写真を撮るときは被写体を限定せずいろんなものを撮っていたんですが、クマと出会ってからは明らかに野良犬を撮ることが多くなっていきました」
クマとの出会いにより野良犬に魅せられ、被写体の多くが野良犬になったことで、彼女の人生は変化を見せはじめていく。クマは2011年に他界したが、その後は別の野良犬を飼い始め、これまで以上に野良犬へと傾倒。
バンコクだけではなくタイ各地、さらには周辺国にまで足を運び野良犬の写真を撮り続け、Twitterで発信し始めるようになった。今井は現在、2つのアカウントを持っている。
1つは「尻尾のない犬」(
タイに野良犬が多い理由
2011年よりタイ・バンコク在住。バンコク発の月刊誌『Gダイアリー』元編集長。現在はバンコクで旅行会社TRIPULLや、タイ料理店グルメ情報サイト『激旨!タイ食堂』を運営しながら執筆活動も行っている。Twitter:@nishioyasuharu
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