タイ・バンコクで野良犬を撮り続ける日本人女性「死んだら私の骨を犬に食べてもらいたい」
私よりも高い身長を誇る目の前の女性は、大きな体躯を丸めて腰をかがめ、両手で包み込むように一眼レフカメラを持ち、被写体にカメラを向け話しかけながらシャッターを切り続ける。場所は『セブンイレブン』の前。タイのコンビニでは店前に犬が数匹たむろしていることは珍しくなく、ときには店内まで上がり込んで通路で寝ている犬すらいるほどだ。
これらの犬はコンビニが飼っているわけではなく、いわゆる野良犬。タイへ来たことがある人ならご存知だろうが、タイには野良犬が多い。最近でこそバンコク中心部では減っているが、それでも少し郊外へ行けば野良犬天国。寺院に住み着いている犬もいれば、市場で半分飼われているような野良犬もいる。タイの人々にとって犬は身近な存在だ。
そんなタイの野良犬に魅せられたのが、コンビニ前で熱心に写真を撮っている日本人女性、今井紀子である。
東京で生まれ育った彼女が初めてタイの地へと降り立ったのは21歳のときだった。友人と訪れたタイにすっかり魅せられ、それからは年に2回ほどのペースで訪タイ。23歳で勤めていた職場を辞し、24歳でタイ移住を決意した。
「私がバンコクで初めて落ち着いて暮らすようになったアパートが、ラチャダー地区にある1か月2200バーツ(執筆時のレートで約7500円)の安アパート。低所得層の人たちがたくさん住んでいるアパートでした」
同じアパートの住人で、彼女に金を貸してくれと頼みに来る者もいた。少額なので貸してやると、何度も催促しなければ返済してくれない。しかも住んでいるエリアは当時、ラリった奴が喧嘩をしていることも珍しくなかったそうだ。
外国人が居住するというだけでもかなりのハードルなのに、日本人女性がここで一人暮らしの生活を送るのがどれほどのものなのか。数年住んだだけでも見上げたものだが、さすがに精神的に疲れ切り、一時は帰国まで考えたという。
スラムのようなアパートで始まったバンコク生活
2011年よりタイ・バンコク在住。バンコク発の月刊誌『Gダイアリー』元編集長。現在はバンコクで旅行会社TRIPULLや、タイ料理店グルメ情報サイト『激旨!タイ食堂』を運営しながら執筆活動も行っている。Twitter:@nishioyasuharu
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