更新日:2018年05月23日 18:49
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タイ・バンコクで野良犬を撮り続ける日本人女性「死んだら私の骨を犬に食べてもらいたい」

彼女が野良犬を通じて伝えたいことは…

「私が死んだら、骨まで野良犬に食べてもらいたい」  私が以前、Twitterで見た彼女の言葉だ。それほどまでに溺愛する野良犬の魅力とは。また野良犬を通じて伝えたいこととはいったいなんだろうか。 「日本で野良犬を見ることはないでしょう。私が幼い頃から野良犬なんていませんでした。日本にいるのは飼い犬だけ。野良犬を見たことのない日本の人々に、タイのように『人と犬が共生している社会』があることを伝えたいんです」  ここ数年、日本でも「殺処分ゼロ」の意識が広がり、民間の動物愛護団体と共に歩みを進めている自治体が増えてきた。実際、神奈川県動物保護センターでは2013年から2016年までの4年間、犬の殺処分ゼロを達成している。  殺処分ゼロを目標に掲げている自治体が増えたとはいえ、日本国内で野良犬を見ることがほとんどないのは、“清潔に見える社会”を目指し犬や猫を徹底的に捕獲しているためだ。  タイでは先述したようにコンビニの店内で悠々と寝ている犬もいれば、寺院や市場などでたっぷりと餌をもらい丸々と太った犬がいたりと、野良犬と人々の距離感は近く、共に生きている社会であることが伺える。  彼女の夢は、これまで撮り溜めてきた野良犬の写真を写真集として出版し、人と犬が共生しているタイ社会の姿を伝えることだという。夢を叶えるため数社に打診したそうだが、実現に至っていないのが現状だ。出版社は鉄板の売れ筋を狙っているため、“野良犬”ではなく“可愛い犬”を扱った写真集や書籍に目が向くのは自然だろう。そういった事情は彼女も理解しているが、決して諦めたわけではない。  コンビニ前で野良犬の写真を撮っていた彼女は、ひとしきり撮り終えたあと、私に向かってこう言った。 「私、野良犬とは話せるんです。でも飼い犬とは心が通じないんだけどね(笑)」  今井紀子は今日もバンコクから、SNSで野良犬を発信し続けている。<取材・文/西尾康晴>
2011年よりタイ・バンコク在住。バンコク発の月刊誌『Gダイアリー』元編集長。現在はバンコクで旅行会社TRIPULLや、タイ料理店グルメ情報サイト『激旨!タイ食堂』を運営しながら執筆活動も行っている。Twitter:@nishioyasuharu
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