搾取される自衛隊員「え? 官舎って現物支給なんですか?」
「自衛隊ができない30のこと 26」
自衛官の給料については、最初から「本来支払われるべき額から官舎経費を差し引いて」俸給表をつくったという国会記録があります。
俸給制度を決めた直後の昭和45年の国会記録によると、公安職の俸給に「残業代や休日出勤手当を払わないで24時間勤務が可能な職種」として21時間の残業手当を上乗せした上で、そこから糧食費や隊舎等費用を差し引いた額にしたということです。だから、隊舎で使う電気代などをさらに隊員から徴収するという行為はそもそも2重取りなのです。トンデモ搾取に呆れちゃいますね。
現在、自衛隊が隊員のために用意している住宅には、①営内と呼ばれる基地内で隊員が集団生活をするための無料の隊舎や待機所、②結婚した隊員たちが家族と住むための有料の官舎、③緊急参集要員のための、基地の外でも特例で無料になる緊急参集要員住宅があります。
実は、無料のはずの営内にある隊舎も、会計検査院の勧告を受けて電気代やトイレットぺーパー代などは自腹で支払うようになっています。この自衛隊員の実質賃金を減らすための仕掛けは他にも存在します。その1つが、この「現物支給」です。計算する仕組みが複雑で気づかない人も多いのですが、これにより自衛官は長年にわたりかなりのダメージを負うことになるので解説します。
会計検査院に次ぐさらなる自衛官の実質賃金を減らす刺客は厚生労働省でした。隊舎や緊急参集要員用の無料官舎以外の有料の官舎を「現物支給とみなして収入に換算するよ」と言うのです。追い討ちをかけるように官舎の値上げも始まりました。つまり、現物支給分を「収入」とみなして、その分、健康保険料を値上げするということです。
この「有料官舎を賃金の現物支給とみなす」制度とは、簡単に言うと官舎に支払っている金額の一部を「現物給与価額=標準価格×延べ面積(平方メートル)×居住面積割合÷1.65-隊舎使用料」という計算式により算出した金額分について「現物支給給与」と換算し、賃金として現金でもらっている金額にそれを加算した金額を「報酬」として、年金額算定の計算に入れるということです。
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おがさわら・りえ◎国防ジャーナリスト、自衛官守る会代表。著書に『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』(扶桑社新書)。『月刊Hanada』『正論』『WiLL』『夕刊フジ』等にも寄稿する。雅号・静苑。@riekabot
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『自衛隊員は基地のトイレットペーパーを「自腹」で買う』 日本の安全保障を担う自衛隊員が、理不尽な環境で日々の激務に耐え忍んでいる…… |
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